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フェリー海難

瀬戸内海におけるフェリー海難の実態調査について

小林 豪(商船学科)

概要 日本は、本州、北海道、四国、九州を含めて約7,000の島嶼が有り、その内400余の島で人々が生活している。本校の位置する瀬戸内海には700余りの島々が存在している。これらの多くの島々での生活を維持するには船舶による海上輸送が無くてはならない存在であり、フェリーにより多くの人や貨物の輸送が行われている。橋のかかっていない離島にとって、このような船舶の海上輸送の安全性確保は極めて重要となる。
本研究は、船舶の安全性向上を目的として瀬戸内海におけるフェリーが起こした海難に着目し、フェリー海難の実態を明らかにしようとするものである。

キーワード 海難調査/瀬戸内海/海上輸送/フェリー

1.はじめに

日本は四方を海で囲まれた島国であり、多くの島々で構成されている国である。資源の限られた島国で経済活動や国民生活を維持していくために必要な原油や天然ガスなどのエネルギー資源、鉄鉱石などの工業原料、小麦や大豆などの食料資源といった物資の多くは海外に依存している。諸外国との安定した海上輸送がなければ、多くの物資や生活資源が入ってこなくなり、日本の経済そのものが立ちいかなくなる。このような日本にとって、船舶は国民生活を維持していく上でなくてはならない輸送機関であり、海運は重要なライフラインである。これらの貿易に占める海上輸送の割合は、トン数ベースで99.7%にもなる。国内輸送においても、国内全体輸送量の約4割を海上輸送が担っている[1]。
広島商船高専の位置する大崎上島は橋のかかっていない離島であるため、フェリーによる海上輸送は生活航路ともいえるものであり、なくてはならない存在である。大崎上島以外にも、フェリー輸送に大きく依存している島は多く存在している。
フェリー(旅客船)(図1)は、鉄道やバスに比べて、一般の消費者が日常的に利用するという印象は少ないかもしれないが、年間1.1億人の通勤、生活、観光の足とされており、これは、航空機の需要を上回っている[2]。
本研究では、フェリー海難減少及び船舶の安全性向上を目的として離島航路を含んだ瀬戸内海におけるフェリーによる過去の海難事例を調査した。


図1 離島を結ぶフェリー

2.事業内容・調査方法

2.1 海難事例の調査方法

海難の発生は、海上交通の特殊性からして、単一要因で発生することは少なく、多くの場合は種々の要因が重なり合い発生する(図2)。
直接的な海難原因とともに、その背景となった様々な海難要因を詳細に検討する必要がある。


図2 海難調査の構成

瀬戸内海における過去の海難事例は、海難審判所で審判が行われた海難の記録が記載されている海難審判所裁決録[3](以下、裁決録という)に記載されている資料に基づいて調査を実施した。調査対象海難は、平成13年1月から平成23年12月に至る過去10年間の裁決録に記載されている瀬戸内海で発生したフェリーによる衝突海難である。
(1)瀬戸内海の範囲
瀬戸内海の範囲は、海上交通安全法によって定義されている下記の海域とした。
「東は和歌山県の紀伊日ノ御岬灯台と徳島県の蒲生田岬灯台を結んだ線を境界線とする。また西側境界線は、愛媛県の佐田岬灯台と大分県の関崎灯台とを結んだ線、関門港の東側境界線に囲まれた範囲」(図3


図3 瀬戸内海の範囲

(2)データベースの作成
裁決録に記載されている調査対象海難の中で、海難要因に影響する必要事項(裁決録 / 海難名 / 海難発生日時 / 場所 / 天候 / 原因 / 衝突した船舶の種類/船員の状況等)を抽出してとりまとめた。

3.調査成果

過去の10年間で裁決録に記載されているフェリー海難は全国で55件発生しており、その内43件が調査対象海難となる瀬戸内海で発生したフェリーによる衝突であった。フェリー海難において瀬戸内海海域は全海域の78%を占めている結果となった。
前にも述べているように、瀬戸内海には多くの島が存在し、かつ航行しているフェリーも多いためである。
(1) 衝突海難発生場所
調査対象海難の瀬戸内海で発生した43件の衝突事例において、発生した場所を、航路内、航路外、港付近、港内に分類して調査した結果の発生割合を表1に示す。
表1より、調査対象海難である瀬戸内海においては、航路内における海難発生割合が45%と最も多い結果となった。この航路とは、伊予灘航路や播磨灘航路といった推薦航路を含んでいる。

表1 海難発生場所の割合

(2) 衝突した船舶の種類
調査対象海難において、衝突した相手船の種類を調査した結果は、漁船との衝突が20件と最も多く、次いで貨物船8件、旅客船3件、その他14件となっている。その他では、押船・作業船・プレジャーボートなどによるものである。
(3) 海難発生原因
海難発生原因別海難件数を2に示す。
海難発生原因は、その事故の主たる原因となったと裁決された「主因」と、主たる原因ではないが事故発生の一因となったと判断された「一因」、又は、「原因無し」に分類される。
調査の結果、原因として横切り船の航法不遵守が原因による海難が最も多い結果となった。

表2 衝突海難原因数

3.まとめ・今後の課題

今回の調査では、過去の海難事例より、瀬戸内海海域で、ファリーが、どのような場所で、どのような船と、どのような原因により、衝突に至っているのかを調査した。
調査の結果、漁船との横切り関係が最も危険な関係であることが分かった。
フェリーは、人命や物資を輸送しているため、一度海難が起きれば多くの犠牲者や損害を出してしまうことになる。瀬戸内海は多くの島々が存在し、多くの離島を結ぶ航路が存在しており、それを担うフェリーは重要な役割を果たしている。
離島航路の定期便であるフェリーは、ダイヤが定められている定時運行であり、時間的な制約も大きく、危険な操船に至ってしまう可能性がある。また、航路の長短はあるが、同じ航路を航行していることによって生じる「慣れ」により、安全航行に最も重要となる周囲の見張りが疎かとなったり、過去の経験からの「間違った思い込みによる判断」などが、大きな危険要因となる。
本調査は平成25年度の卒業研究で実施したものであり、まだまだ不十分な点が多くある。 今後、船舶交通の輻湊度合や地理的条件といった細かな要因も考慮に入れた調査や現場実務者へのアンケート及び、ヒアリング調査を実施し、より具体的な海難防止策を検討していく調査を進めていきたいと考えている。

参考文献
1) 商船高専キャリア教育研究会:マリタイムカレッジシリーズ船舶の管理と運用,pp.14-16(2012
2) https://www.sof.or.jp/jp/news/51-100/100_3.php
3) 海難審判所裁決録,H13.1~H23.12


原稿受理:2014年4月30日 公開日:2014年5月23日

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