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安芸津フェリー利用者意識

安芸津フェリーの利用者意識に関する研究

岡山 正人,風呂本 武典,田上 敦士(流通情報工学科)

概要 大崎上島の大西港と東広島市の安芸津港を結んでいる安芸津フェリーは,大崎上島の高齢化や人口減少により利用者が減少し平成26年には赤字となっている。瀬戸内海の多くの島では大崎上島と同様,過疎・高齢化により島と本州とを結ぶ生活航路の利用者が減少し,安芸津フェリーのように赤字となっている航路も少なくない。こうした航路の今後のあり方を探るには,その利用実態や利用者の運航形態への意識について知ることが不可欠であるが,安芸津フェリーをはじめ多くの航路ではこうしたことを調査・研究した例は多くはない。本研究では,安芸津フェリーの利用者に直接ヒアリングを実施することで,安芸津フェリーの利用実態や運航形態に対する利用者の意識を分析した。

キーワード 研究/交通/フェリー/生活航路

1.はじめに

日本は島国であり,その多くの島では過疎化,高齢化が著しく進み大きな問題を抱えている。それに伴いフェリーや高速船の利用車両は減少する傾向がみられ,それらの運航会社の経営にも影響を与えている。本研究で対象とする安芸津フェリーもこうした利用者数の減少により,平成26年現在,赤字となっている。そこで本研究では,こうした安芸津フェリーのあり方を探るため,役場や運航会社である安芸津フェリー㈱および利用者にヒアリング調査を行うことで,その利用実態や利用者意識などを明らかにする。
以下ではまず,本研究の対象航路となる「大西-安芸津航路(安芸津フェリー)」の概要を述べた後,役場,フェリー会社,安芸津フェリーの利用者に行ったヒアリング調査の概要について説明する。
次に,実施したヒアリング調査の結果を用いて,旅客利用者の利用意識について分析したもの及び車両利用者の利用意識について分析したものについて述べる。
最後に,本研究で得られた成果をまとめるとともに,今後の課題について考察する。

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図1 安芸津フェリーの航路

なお,大崎上島のフェリーについて分析したものには,田中および本稿の著者の一人である岡山が,白水-竹原フェリーについて分析した1)2)例があるが,安芸津フェリーについて調査・分析した例は見られない。

2.内容

2-1 安芸津フェリーと実施したヒアリング調査の概要使用データの概要

(1)安芸津フェリー(安芸津-大西航路)の概要
ここでは,大西-安芸津航路(安芸津フェリー)の概要について説明する。安芸津フェリーは広島県豊田郡大崎上島町の「大西港」と広島県東広島市安芸津町の「安芸津港」を結んでいる。図1にその航路を示す。
表1は,安芸津フェリーの概要について示している。本航路は平成24年度には年間約1,581万円の赤字が発生している。なお,大崎上島町大串港を経由する便もあったが平成20年7月15日に廃止されている。

2)大崎上島町役場へのヒアリング
大崎上島町の安芸津フェリーに対する考えを知るため,大崎上島町役場にヒアリングに出向いた。ヒアリングを行ったのは,平成26年6月24日で,フェリーなどの公共交通機関を担当している企画振興課の係長および係員1名にヒアリングを行った。
fery2ヒアリングによると,中国電力が工事も終了する予定のため,その後また赤字が増加するかもしれないと考えているようだった。また,現在の赤字額約1,600万円を,広島県が500万円,東広島市が250万円,大崎上島町が250万円に分けて補助していることもわかった。なお,フェリー会社も利用者の増加を目指し,車両の回数券を商工会を通して各個人にばら売りしてもらうなど,努力をしているということもわかった。

(3)フェリー会社へのヒアリング
次に,安芸津フェリーを運航している安芸津フェリー㈱にヒアリングを行った。ヒアリングは平成26年7月15日に同社の業務部長に行った。この結果,中国電力の工事により利用者は増加しているものの,燃料費が高騰しているため収益はあまり上がっていないとのことだった。
また,利用者からJRやバスの乗り継ぎが悪い,最終便を遅くしてほしいなどの要望があるが,頻繁に時刻表を変えることが難しいなど,対応することが困難であるとのことだった。また,観光による利用者増を目指すといった意見もあるが,大崎上島には観光名所が少なくPR力もないため,話が進んでいないとのことだった。

(4)利用者へのヒアリング
本研究では,安芸津フェリーの利用実態や運航形態への利用者意識を知ることを目的に,安芸津フェリーの利用者に直接ヒアリング調査を行うこととした。
本ヒアリング調査は「安芸津フェリー株式会社」,「安芸津フェリー乗船客」の協力を得て,平成26年9月12日,22日にヒアリング調査を実施した。
調査方法は,調査員4名が安芸津フェリーに乗船し「旅客」「車両」それぞれに直接ヒアリングを行った。
「旅客」への主な調査内容は,安芸津行と大西行でアンケート用紙を分け,以下の内容を尋ねた。
設問1: 被験者の属性(性別・年齢等)
設問2: 安芸津フェリーの利用状況(利用頻度・利用目的等)
設問3: 安芸津フェリーの運航についての意見(運航形態に対する不満や要望)
設問4: 安芸津フェリーと竹原フェリーの利用状況の違いについて(利用頻度・
利用目的等)
旅客のアンケート回収状況は9月12日41票,9月22日38票,合計79票となっている。

「車両」での主な調査内容では,車両での大きさでアンケート内容が少し異なるため安芸津行と大西行および4m未満と5m未満でアンケート用紙を分け,以下の内容を尋ねた。
設問1: 被験者の属性(性別・年齢等)
設問2: 安芸津フェリーの利用状況(利用頻度・利用目的等)
設問3: 安芸津フェリーの運航についての意見(運航形態に対する不満や要望)
設問4: 安芸津フェリーと竹原フェリーの利用状況の違いについて(利用頻度・
利用目的等)
車両でのアンケート回収状況は9月12日42票,9月22日47票,合計89票となっている。

3-1 旅客利用者の利用意識の分析

まずここでは,大西-安芸津航路での旅客利用者の利用意識について,先に述べたヒアリング調査をもとに分析した結果を述べる。
(1)利用者の属性
最初に,「性別」や「年齢」「居住地」「定期券」の有無など,利用者の属性について分析した。
図2は「性別」について見たもので,これによれば安芸津行では「女性」が64%,一方,大西行では「男性」59%と違いがある。
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図3は「年齢」について見たものであるが,安芸津行では60代以上が45%に対し,大西行では35%と若干少なくなっている。
「居住地」では,大西行は散らばりが見られたが,安芸津行では,「大崎」が43%と大崎の住民が多く見られた。また,「定期券」の有無について見たところ,安芸津行,大西行のいずれも8割の人が定期券を持っていなかった。このことから,安芸津行も大西行も頻繁に安芸津フェリーを利用している人は多くないものと想像できる。
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(2)旅客利用者の利用実態
次にここでは,安芸津フェリーに対する利用実態について説明する。
まず図4は「利用頻度」について分析した結果である。この図によると,安芸津行では「月1回程度」と「月1回以下」を合計すると63%となり,半数以上占めている。大西行でも「週3から5日」が30%と多くなっているものの,「月1回程度」と「月1回以下」の合計は50%となっている。このように安芸津行も大西行も毎日利用する人は多くない。
また,図5はフェリーの「利用目的」について見たものである。これによれば,安芸津行では「通院」が40%となっており,島外の病院に通院している利用者が多いことがわかる。一方,大西行では「通勤・通学」が35%で,現在大西にある中国電力の工事関係者の利用が多いためだと考えられる。
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次に,図6の「行き先」について見たところ,安芸津行は「東広島安芸津方面」46%,「呉方面」18%となっており,大西行は「大崎上島町大崎」64%となっている。
以上のように,安芸津行では安芸津及びその西方を目的地にする利用者が多いことがわかる。一方で,大西行では大西港のある大崎に行く人が多い。
これらのことから,安芸津行では大崎上島の島民の方が通院のために利用しており,大西行では島外の方が大崎にある中国電力の仕事関係で利用している人が多いことがわかる。そして,安芸津行も大西行も毎日利用する人は少なく,安芸津行では月1回以下,大西行では週3~5日と月1回以下の利用者が多いことがわかった。fery7
(3)運航形態への意識
ここでは,「料金」や「運航時刻」「便数」の満足度について分析した。
まず,図7は安芸津行の利用者の運航形態への意識について見たものであるが,不満・やや不満を合計すると,「料金」38%,「始発時刻」35%,「終発時刻」67%,「便数」54%となっており,終発時刻に一番不満があり,続いて便数にも半数以上の利用者が不満を持っていることがわかる。
次に,図8では同様の分析を大西行の利用者で行ったものである。これによると,安芸津行のように不満・やや不満の合計をしてみると,「料金」33%,「始発時刻」20%,「終発時刻」54%,「便数」38%となっていた。このように,大西行も安芸津行と同様に終発時刻に半数以上の人が不満を持っており一番不満を感じている。
以上のことから,安芸津行は終発時刻と便数に不満の割合が多く,大西行では終発時刻の不満が目立った。
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4-1 車両利用者の利用意識の分析

ここでは,大西-安芸津航路での車両運転手の利用意識について,実施したヒアリング調査をもとに分析した結果を述べる。
(1)利用車両の属性
車両での利用者について分析したものを説明する。まず図9では,利用車両の違いについて分析した。これによれば,安芸津行および大西行の4m未満の比率はそれぞれ65%,73%となっており,4m未満での利用が多いことがわかる。これは4m未満のほうが5m未満に比べ車両を載せる料金が安いためと考えられる。
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(2)車両利用者の利用実態
安芸津フェリーの利用実態として,まず図10では「利用頻度」について調べた。この結果,安芸津行では「週に1日以上利用する」ものは37%,大西行でも37%となっており,安芸津行も大西行もあまり頻繁にフェリーを利用しない人が多いことがわかる。
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また図11では,「利用目的」について分析した。この結果を見ると,安芸津行では「通院」が37%と最も多くなっている一方,大西行は「仕事・営業」が57%と最も多くなっており,傾向に大きな違いが見られる。
図12では「行き先」について分析した。この結果をみると,安芸津行は「広島方面」34%,「呉方面」27%,大西行では「大崎上島町大崎」が70%,「その他」が15%となっていた。このように,旅客同様,安芸津行では安芸津から西方面に行くものが多く,大西行では港のある大崎地区を行き先にしている利用者が多くなっている。
また,「料金の支払い主」について分析したところ,安芸津行は「自分」が67%と最も多くなっていた。その一方,大西行では「会社」の59%が最も多くなっていた。これは,図11の利用目的の分析で見たように,安芸津行では通院目的が多いため自分で支払う人が多く,大西行は仕事関係で大崎上島に行く人が多いため,会社が支払う場合が多いものと考えられる。
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(3)運航形態への意識
次に「運航時刻」や「料金」「便数」等,運航形態に対する満足度について分析した。図13と図14はその結果を示したものである。これらを見てみると,不満・やや不満の合計を見ると,安芸津行では「料金」67%,「始発時刻」34%,「終発時刻」59%,「便数」54%と,料金に対する不満が最も多くなっているが,終発時刻や便数に対する不満も多い。一方,大西行では不満・やや不満の合計は「料金」42%,「始発時刻」14%,「終発時刻」55%,「便数」45%となっており,安芸津行と同様終発時刻に対する不満の声は多いものの,先にも述べたように大西行の利用者では料金を会社が負担している傾向が強いためか,料金に対する不満は安芸津行に比べれば不満を感じているものは少なくなっている。
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3.成果とまとめ

本研究では,安芸津フェリーの利用者に実施したヒアリング調査結果などをもとにその利用実態や運行形態への意識について分析した。本研究で得られた結果を要約すると次のようになる。

1)旅客の研究成果のまとめ
・被験者の属性では,定期券を持っていない利用者が多かった。
・利用実態では,安芸津フェリーを毎日利用する人は少なく月1回かそれ以下のものが多くなっており,利用目的では通院目的が多かった。
・運航形態では,全体的に不満という意見が多く,特に終発時刻と便数に対して不満を感じている人が多かった。

2)車両の研究成果のまとめ
・料金が安いためか4m未満の車両での利用が多くなっていた。
・利用実態では,月1回程度の利用が多く頻繁に利用する人は少なくなっていた。また利用目的では安芸津行では通院が多く,大西行では仕事・営業の比率が多かった。
・運航形態では,安芸津行,大西行ともに終発時刻や便数に不満のものが多かった。料金については安芸津行では不満とするものが最も多かった一方,大西港行では不満とするものは安芸津行ほど多くなかった。

本研究では,平日に行ったヒアリング調査結果のみを分析した。今後は休日にヒアリング調査を実施する必要がある。また,今回のヒアリング調査では一部誤解を招く記述があったため回答者に誤解を与えないで回答ができるアンケートに直すことと,調査票の分析していない項目があり,それについても分析を進めていきたい。

参考文献
1)田中康仁,岡山正人:瀬戸内海における島と本土とを結ぶフェリーの利用者意識に
関する分析,土木計画学研究・講演集Vol.42,CD-ROM(2010)
2)田中康仁,岡山正人:瀬戸内海における島と本土とを結ぶフェリーの利用者意識に
関する一考察,土木計画学研究・講演集Vol.40,CD-ROM(2009)

(公開:平成28年4月)

 

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