国立広島商船高等専門学校
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防火・救命技術の習得

-防火・救命講習による技術の習得と応用-

木下 恵介,河村 義顕,小林 豪,雷 康斌,中島 邦広(商船学科),岩井 一師(一般教科)
清田 耕司,茶園 敏文,薮上 敦弘,大内 一弘,江草 佳弘,山田 健治,清水 和敏,
三阪 晃,前川 一高(広島丸),
竹内 康二,秋本 剛志,丸山 真弘,重岡 洋平,藤広 洋,大浦 勝也,高橋 良幸,
後藤 佑太(技術支援センター)

概要 本校では,商船学科2年生を対象として防火講習を,商船学科4年生を対象として救命講習を実施している。これらの講習は,海技免状を取得するために必要な登録海技免許講習であり,船上での非常事態を想定した様々な実習を行なっている。本報告では,防火講習及び救命講習を通した実践的教育による専門的な知識と技術の習得,さらには応用力の涵養を目指した教育的取組みについて報告する。

キーワード 教育/防災・安全/防火・救命

 1.はじめに

本校では,商船学科2年生を対象として防火講習を,商船学科4年生を対象として救命講習を実施している。これらの講習は,海技免状を取得するために必要な登録海技免許講習であり,船上での非常事態を想定した様々な実習を行なっている。しかし,今般の国際海事機関の方針により,その内容についてより実践的な訓練が求められるようになった。これまで視聴覚教材による代替措置が認められてきた講習についても,今後は実技による講習のみが有効となるなど,講習の要件がより厳しいものになってきている。このような背景のもと,救命講習の内容の一つである心肺蘇生法については,これまで行なってこなかった実技による講習を昨年度より実施するなど,より実践的な教育に移行している。

2.教育内容

2-1 防火講習

防火講習は商船学科2年生を対象として実施される。事前学習として,火災の基本的知識である燃焼の三要素(燃焼は,酸素,熱源,可燃物の3つの条件が揃うことで生じる)や,火災には種類(ABCD火災)があり,それぞれに適した消火手段や消火器の種類があること等をまず座学で学習する。その上で実技として,実際に消火訓練を実施している。消火訓練実施の際には,実際に炎を発生させ消火を行なうため,事前に地元消防署へ届出を行ない,許可を得た上で実施している。
消火訓練は,3種類の消火器(粉末消火器,泡消火器,炭酸ガス消火器)をそれぞれ使用して行なうとともに,放水訓練も合わせて行なっている。消火訓練の様子を図1から図3に示す。
また,防火講習の事前学習の一つとして,安全教育を実施している。内容としては,過去の消火訓練で発生したヒヤリハット事例の検証を行なっている。ヒヤリハットとは,実際に事故には至っていないが,事故が起きていてもおかしくないような出来事をいう。過去の実習で発生したヒヤリハット事例を自分の身に置き換えて考えることで,実習に取組む上での安全意識の向上を図ることができる。また,ヒヤリハット事例の検証の方法として,リスクアセスメントを行なっている。リスクアセスメントとは,考えられる危険を数値化し,危険を定量的に評価することで危険(リスク)を管理する手法であり,安全教育として有効な手段である。こういった安全教育は継続して何度も実施することが効果的であることから,防火講習終了後も1年に一度の頻度で様々な実習を通したヒヤリハット事例の検証を実施している。

2-2 救命講習

救命講習は商船学科4年生を対象として実施される。内容としては,救急救命法及び海上サバイバル訓練の2つに分けられる。
救急救命法では,消防署において一般市民を対象に実施している「普通救命講習Ⅰ」を東広島市消防局の協力のもとで行なっている。「普通救命講習Ⅰ」は心肺蘇生法についての講義及び実技を3時間かけて学ぶものである。胸骨圧迫による心肺蘇生法,AEDの使用法,異物除去や止血法について講習を受ける。講習の様子を図4及び図5に示す。
海上サバイバル訓練では,船舶での非常事態を想定し,船舶より脱出する訓練を行なっている。具体的には,着衣の上から救命胴衣を着用し,本校練習船「広島丸」より海中に飛び込み,海上の離れた場所に配置された救命いかだに乗り移る訓練を行なっている。海上サバイバル訓練の様子を図6に示す。

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3 .成果

防火講習では,消火のために必要な火災に対する知識を習得するとともに,実際に炎を発生させ消火訓練を実施するといった実践的な教育を行なっている。
救命講習における救急救命法では,地域の消防署の協力により,心肺蘇生法についての知識と技術の習得を実現できている。図7及び図8は,救急救命処置としての一連の動作をどの程度実施できるかということについて,講習前及び講習後に分けて学生に対してアンケート調査を行なった結果である。棒グラフは回答した人数の割合を示している。この結果から,講習を通して確実に能力が身についていることが分かる。
また海上サバイバル訓練では,非常事態を想定した船舶から実際に離脱するといった実践的な訓練を行なっている。さらに,これらの実習を通したヒヤリハット事例の検証を定期的に実施することで,安全について自ら考え,危険を管理するといった応用力の涵養に取組んでいる。ヒヤリハット事例の検証の際,学生に自らの考えを発表させているが,こういった安全教育の継続的な実施によって,安全管理に対する能力が着実に身についていると実感している。

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4.おわりに

前述で述べたとおり,本校では商船学科2年生を対象として防火講習を,商船学科4年生を対象として救命講習を実施している。防火講習では,消火のために必要な火災に対する知識を習得するとともに,実際に炎を発生させ消火訓練を実施するといった実践的な教育を行なっている。一方,都市部に立地している教育機関では,安全上の理由から実際に炎を発生させるような消火訓練を実施できない場合がある。こういった実習を地域の理解を得て実施できることは,周囲を海に囲まれて立地する本校の特色であると言える。また救命講習では,地域の消防署の協力によって救急救命法を学び,また海上サバイバル訓練では実際に船舶から離脱するといった実践的な訓練を行なっている。さらに,実習を通したヒヤリハット事例の検証を定期的に実施することで,安全について自ら考え,危険を管理するといった応用力の涵養に取組んでいる。

(公開:平成28年5月)

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