国立広島商船高等専門学校
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大崎上島の人口推移

大崎上島の人口推移に関する研究

三谷 祐人(株式会社レニアス、専攻科修了生、現大崎中学校卒)・岡山 正人(流通情報工学科)

概要 本校の位置する大崎上島は過疎化・高齢化が著しく、島の抱える問題に多くがこれらのことに起因している。そのため、過疎・高齢化の将来像を把握することは、様々な問題を解決する施策を考案する際の基礎データとして非常に重要なものである。本研究では、住民基本台帳をもとに、大崎上島の将来の人口について予測することで、過疎化や高齢化の状況について分析することを試みた。

キーワード 研究/人口推移/過疎化・高齢化

1.はじめに

我が国の人口は、2010年の国勢調査の結果、国勢調査ベースではじめて減少に転じた。65歳以上の人口の比率を示すいわゆる高齢化率も23.0%となり、世界の中でも最も高い値を示していると言われている。こうした、人口減少、高齢化の波は地方では著しく、特に山間部や島々などではその影響は顕著である。
本研究で対象とする大崎上島でも、1985年には14,000人ほどあった人口は2010年度には8,140人となり、高齢化率も1985年には20%程度だったものが2010年には40%を超える値となるなど、過疎化・高齢化が著しく進んでいる。こうした過疎化・高齢化の影響は小学校や中学校の統合、高校の廃校などの教育問題から、フェリーの利用者の減少、島と本土とを結ぶ高速船の廃止の危機、高齢者を中心とした移動困難者の増加といった交通問題など、様々なところに現われてきている。
現在、大崎上島町役場を中心とする行政や島内のNPO法人などが、こうした問題についての施策を考案しようとしているが、島の将来における過疎化や高齢化の実態を把握することは、こうした施策を考案するにあたって最も重要なデータのひとつであろう。
そこで本研究では、大崎上島町の将来の人口について予測することで、過疎化や高齢化の状況について分析することを試みた。

2.事業内容

本研究では、大崎上島町の持つ住民台帳をもとに島全体の人口推移を予測するとともに、島の「区」と呼ばれる集落ごとに人口予測を行うことを試みる。こうした島の将来の人口分布を推計することにより、今後の生活関連施設の立地の在り方について分析するための基礎データを得ることを目的とする。
以下ではまず、大崎上島や使用データの概要を述べるとともに、本研究における人口推移に考え方を示す。次に、この考え方に沿って行った島全体の人口推移の予測結果、および、地域(「区」)ごとに予測結果について述べる。また、こうして得られた人口推移の結果の利用方法の一例として、大型スーパーや病院などの生活関連施設について、それぞれの現在の立地が将来の人口分布から見て適当であるかどうかを検討したものを説明する。

3.成果

3.1 分析対象地域とデータの概要

本研究では、過疎化・高齢化が進む瀬戸内海の島の一つとして、大崎上島を分析対象とした。表-1は今回の分析対象の大崎上島の主な概要を示したものである。大崎上島は瀬戸内海のほぼ中央、広島県竹原市の沖約10kmに浮かぶ面積約43.3km2の島である。かつては島内に「東野町」「大崎町」「木江町」の3つの町からなっていたが、平成の大合併により「大崎上島町」として合併した。
その人口は、2010年度の住民基本台帳によると8,140人であり65歳以上の人口比率を示す高齢化率は約45%となっている。また、本州および四国への交通アクセスとして、7航路のフェリーおよび高速艇が運行されている。島内の公共交通機関として「さんようバス」という路線バスと、「おと姫バス」と称するコミュニティバスが運行されている。
島内は「区」と呼ばれる37の集落により構成されている。ほとんどの区には「集会所」があり、その利用頻度は高く、婦人会やサークルなどがこうした集会所を利用することで活動を行っている。このように「区」を単位としたコミュニティとしての繋がりは非常に強い。
本研究では、大崎上島町役場から得た2005年~2010年度の住民基本台帳をもとに、大崎上島全体と、この「区」を単位として分析することとした。

表1 大崎上島の主な概要

3.2 本研究における人口推計の考え方

1)一般的な人口推計の考え方[1,2]
将来の人口を推計する方法にはいくつかの方法があり、過去の人口の時系列な推移にあてはまる近似曲線を求め、その近似曲線から推計したい年度の人口を推計する方法や、「コーホート法」と呼ばれる方法等が一般的によく利用される。
近似曲線を用いた方法では、その曲線に「指数関数」や「ロジスティクス曲線」などが用いられるが、指数関数などでは人口の値が無限に大きくなってしまう欠点がある一方、ロジスティクス曲線を利用した方法は、考え方がわかりやすいことや計算が比較的容易なため幅広く利用されてきた。しかし、近年では人口変化の要因を明示的に取り扱うことができる「コーホート法」がより広く利用されるようになってきた。
「コーホート法」は、同年(または同時期)に出生した人口が死亡や他地域への出入りにより変化する状況を分析することで人口を推計する方法で、「コーホート要因法」および「コーホート変化率法」の二つの方法が知られている。「コーホート変化率法」は、同一コーホート(すなわち同時期に出生した人口)ごとの一定期間内の人口増減を「コーホート変化率」として捉え、その「コーホート変化率」が将来も変化しないものと仮定することで、人口の推移を分析しようとするものである。
一方、「コーホート要因法」は、「コーホート変化率法」の「コーホート変化率」にあたる部分を「死亡率」や「他地域への出入り」など、人口増減に影響を及ぼす各要因それぞれについて、様々なデータを用いて推計することで、より理論的に人口を推計しようとするもので、国が将来の人口推計を行う際にも利用されているものである。
一般に、「コーホート要因法」の方が「コーホート変化率法」に比べ理論的には優れているものの、様々なデータを必要とするといった欠点もある。本研究では、様々なデータを取得することが困難であり、住民基本台帳のデータのみから人口推計を行わなければならなかったため、「コーホート変化率法」により人口推計を行うこととした。
2)本研究における人口推計の方法[3]
本研究では、2005年から2010年までの住民基本台帳をもとに、「コーホート変化率法」を用いることで、大崎上島の将来の人口を推計することとした。推計する人口は男女別、2015年から2045年の5年ごととし、年齢の階級は0~4歳、5~9歳というように5歳毎、85歳以上はひとつにまとめることとした。
以下では本研究で行った人口推計の方法を説明する。
①5歳以上の各階級の人口の推計
ある年齢の階級の推計人口は、推計したい年の5年前における推計する年齢の階級より1つ若い階級の人口に「コーホート変化率」をかけることで推計する。たとえば、2020年の40~44歳を推計する際は、2015年における35~39歳の人口に「コーホート変化率」をかけることで求める。
「コーホート変化率」は、死亡や転出・転入による人口変化を1つにまとめたものであり、過去の人口から、各年齢の階級ごとに男女別に以下のように求める(なお、以下の式では、性別の違いは省略している。)。
基準年におけるある年齢の階級のコーホート変化率
=基準年の対象の年齢の階級の人口÷基準年の5年前における
対象の階級より1つ若い階級の人口
「コーホート変化率」は5時点分(5年毎に推計するのであれば25年分)のデータから推計することが望ましいと言われているが、本研究では2005年から2010年のデータしか得られなかったため、基準年を2010年とする「コーホート変化率」を計算し、その値を使用することとした。
②0~4歳の人口の推計
これは5年間の出生数を意味する。5年間の出生数は推計年度の15歳~49歳の女性の人口に「婦人子供比」をかけることで求め、これを男女別にするために「子供性比」を用いることとした。ここで「婦人子供比」は、
婦人子供比=基準年の0~4歳の人口÷基準年の15~49歳の女性人口
のように求め、最新のデータである2010年を基準とした。一方「子供性比」は、
子供性比=0~4歳の男子人口÷0~4歳の女子人口
のように表され、本研究では2010年を基準とした「婦人子供比」および「子供性比」を求め、これらの値を用いることとした。

3.3 大崎上島全体の人口の推移

まずここでは、大崎上島全体を対象に将来の人口予測を行った結果について考察する。図1は、大崎上島町役場が持つ住民基本台帳をもとに、3.2の2)で述べた方法によって人口予測を行い、得られた将来の予測人口と65歳以上の人口比率を表す高齢化率を、5年ごとに2045年までを図示したものである。なお、2005年と2010年の値は実績値となっている。

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図1 大崎上島全体の人口推移と高齢化率

このをみると、2010年に8,140人あった総人口は、5年ごとにおよそ1,000人ずつ減りながら、2045年には2,365人となり、2010年の30%まで減少してしまうことがわかる。また高齢化率をみると、現在は上昇傾向にあるが2015年の47%を境に減少していき、2035年の40%から再び上昇していくことがわかる。
次に、図2は、2010年の実際の人口を表した人口ピラミッドである。このを見ると、全体に占める人口の割合で、男女ともに60歳以上の人口が非常に多くなっていることがわかる。特に女性の60歳以上の高齢者の数をみると、どの年代も400人を超しており、85歳以上にいたっては500人を超える値となっている。このように、現在の大崎上島では60歳以上の人口が非常に多く特に女性でその傾向が強い。

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図2 2010年の実際の人口ピラミッド

図3から図6は本研究で算出された予測される各年の年齢別の人口を、2015年から10年毎に人口ピラミッドの形で表示したものである。

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図3 2015年の予測人口ピラミッド
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図4 2025年の予測人口ピラミッド
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図5 2035年の予測人口ピラミッド
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図6 2045年の予測人口ピラミッド

2015年から2045年までの全体の流れを見てみると、徐々にピラミッドの幅が狭くなり人口が減少していることが見てとれる。また、60歳以上の高齢者の数を見ると、2010年に400人を超す程多くいた女性の高齢者の数は、2015年には400人を下回り、2035年には2010年のおよそ半分の平均200人程度まで減少している。
このような高齢者の著しい減少により、高齢者と非高齢者である64歳以下の人口との差が縮まり、図1で示した2015年からの高齢化率の減少につながっているものと考えられる。しかしながら、こうした高齢者の人口の著しい減少も落ち着いてくると、再び高齢者と非高齢者の人口の差が広がっていき、図1で示された2035年からの高齢化率の上昇につながっているものと考えられる。

3.4 区単位の人口の推移

1)区単位の人口の推移
大崎上島には、図7に示すように「区」と呼ばれる集落がある。ここからは、大崎上島の「区」ごとの人口予測を行い、島の将来の人口分布を推計することで今後の更なる分析の基礎データを得ることとした。ここで推計した期間は3.3と同じように2015年から2045年とし、推計に用いた方法も3.22)で説明した方法と同様な方法をとることとした。

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図7 大崎上島の全37区と旧3町行政区分

本来3.3で推計した大崎上島の全体の予測と、本章で行った各区の人口推計の総計とは同じ値とならなければいけないが、2045年の時点で区ごとの推計の総計は島全体の推計値に比べ、1000人ほど多くなってしまった。このような差が出た理由は、「婦人子供比」の値に2010年を基準としたものだけを利用しており、島全体の「婦人子供比」の値に比べて、より大きな「婦人子供比」の値を持つ区が存在し、これらの区では出生数が大きく推定され人口の減少の程度が小さくなったことによるものと考えられる。以上のことから今後は「婦人子供比」を1つの基準年から求めるようなことはせず、複数の基準年の値も求め、それらの値を平均化するなど工夫が必要であると思われる。
また本研究では、以上のような人口分布の推計結果をGIS(地理情報システム)を利用して表示することとした。こうしたGISを用いた分析結果の表示は、結果を直観的に捉えることができるため、結果を考察する際に非常に有効な方法であるのと同時に、一般の人たちへの研究紹介の際にも大いに役立つものである。
大崎上島では行政をはじめ島民の多くが、過疎化や高齢化の実態や今後の動向などについて十分に把握しているとは言い難く、こうしたGISによる大崎上島の人口分布の推移の表示は、行政のみならず島民にとっても過疎化や高齢化の実態を理解してもらうために大変有効であるものと考えられる。
まず図8は、2010年の実際の人口を区ごとに色分けして表示したものである。このをみると、旧大崎町の「向山」が唯一900人以上の人口を有しており、突出して多くなっている。これに続いて「大西」「原田」「大串」などが400から600人となっており、何れも旧大崎町で人口が多くなっている、その一方で「小原」「上組」「下組」「山尻」など山間部で人口が100人を下回っている。

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図8 2010年の実際の区ごとの人口

図9から図12は、2015年から2045年の区ごとの人口予測の結果を示したものである。なお、分析した結果は5年ごとであるが、は10年毎に掲載した。

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図9 2015年の区ごとの予測人口
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図10 2025年の区ごとの予測人口
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図11 2035年の区ごとの予測人口
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図12 2045年の区ごとの予測人口

これらのを見ると、全体的に年々色が薄くなっていき、人口が減少していく様子が明確に現われている。特に、2010年ですでに100人を下回っていた山間部の区に加えて、2025年頃には旧木江町に属する「本浜」「向浜」「三里浜」など四国側の海沿いの区で100人を下回るようになってきている。2045年になると全37区ある区の内、28もの区で人口が100人以下となってしまうことがわかる。
2)区単位の高齢化率の推移
ここでは、先の分析で予測して得られた人口から、各区の高齢化率、すなわち各区の65歳以上の人口の比率を算出し、GISを使用して大崎上島の地図上に表示することで、区ごとの高齢化率の推移について分析していく。
図13は2010年の実際の人口から区ごとに算出された高齢化率を色分けして表示したものである。この図を見ると、全体的に高齢化率は高く、40%以上の高齢化率を持つ区が多いことがわかる。その中にあって「向山」「片浜」「本郷」など、旧大崎町の中心部には全体的に色が薄く、高齢化率が低い区が集中している。また、色の濃い高齢化率が高い区に注目すると、旧東野町の「上組」「下組」や旧木江町の「本浜」「天満」など、山間部に位置する場所や旧木江町の海沿いなど、現在人口が少ない区となっている。

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図13 2010年の実際の人口の区ごとの高齢化率

図14から図17は、2015年から2045年の区ごとに予測された高齢化率を色分けして示したものである。なお、先の人口分布の分析と同様、分析した結果は5年毎であるが、は10年毎に掲載している。

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図14 2015年の区ごとの予測高齢化率
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図15 2025年の区ごとの予測高齢化率
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図16 2035年の区ごとの予測高齢化率
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図17 2045年の区ごとの予測高齢化率

これらのをみると、高齢化率の推移は、区により様々な傾向があるが、①高齢化率に大きな変化が見られないもの、②上昇傾向が続くもの、③多少上下する区もあるが全体的に減少傾向にあるもの、の大きく3つに分けられる。
①に属するものとしては、旧大崎町の中心部またはその周辺にあたる「向山」「片浜」「本郷」、旧東野町や旧木江町の「垂水」「天満」などが含まれ、比較的人口が多い区や旧町において中心部にあたる区が多い。また、②に含まれるものには旧東野町の「古江」や、四国側の海沿いにあたる旧木江町の「向浜」「三里浜」「木越」などが含まれ、③に含まれるものとしては「鮴崎」「上組」など比較的人口の少ない区となっている。
なお、大崎上島のように高齢化が進んだ地域において、③のように高齢化率が減少する傾向があるのは、以下のような理由によるものと考えられる。③に含まれる区は先に述べたように人口が少なく、2010年の段階で既に高齢化率が高い区である。そのため、これらの人口の多い高齢者が順に死亡していくことにより高齢化率が減少していくものと考えられる。

3.5 生活関連施設と将来の人口分布

1)買い物施設と将来の高齢者の人口分布
ここからは、先の人口分布の将来予測の結果を利用した分析事例として、将来における高齢者の人口分布の状況から、生活関連施設の立地場所が適切かどうかを調べることとした。
ここでは生活関連施設として高齢者の生活にとって非常に重要なものと思われる「買い物施設」と「病院」を取り上げることとした。また、以前のアンケート調査で75歳を超えると自動車の運転が困難になるといった意見が多かった[4]ことから、75歳以上のものを高齢者として取り扱うこととし、買い物施設や病院の場所と75歳以上の高齢者の2045年の人口分布を地図上に表示するとともに、これらの高齢者が自動車の運転が困難であることを想定し、各施設からの10分および20分徒歩圏、および島内で運行されているコミュニティバス(おと姫バス)の路線を表示することとした。なお、島内には現在「さんようバス」という路線バスも運行されているが、補助金が近く打ち切られる可能性があるといった状況にあるため、ここでは「さんようバス」が廃止されることを想定することとした。
まず図18は、以上のような分析を買い物施設で行った結果を示している。現在島内では、旧大崎町の東部(ユアーズ)と旧東野町の西部(パルディ)の2箇所に比較的大きなスーパーマーケットが存在しており、これらと75歳以上の高齢者の将来の人口分布について分析した。

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図18 2045年における75歳以上の人口分布と島内のスーパーマーケットの位置

まずこのから2045年の75歳以上の高齢者の分布を見ると、50人以上いる区は「向山」「片浜」「本郷」などとなっており、旧大崎町の中心部に分布していることがわかる。また、多くの区では20~30人の高齢者が分布しているが、旧大崎町の「山尻」や旧東野町の「上組」「下組」をはじめ、「天満」「瀬井」など、現在すでに人口が少なくなっているような区では、75歳以上の高齢者は10人にも満たなくなっている。
次に、島内に2つあるスーパーマーケットについて見てみると、まず旧大崎町にある「ユアーズ」については、20分徒歩圏に「向山」「片浜」「本郷」「大西」「原下」といった高齢者の多い区の主要部分が含まれていることに加えて、「大串」「原田」など高齢者の人口が比較的多く分布している地域からも自動車を利用しなくても「おと姫バス」により行くことができ、これらの区の高齢者にとっては比較的良好な位置に立地しているものと考えられる。一方、旧東野町にある「パルディ」については、「おと姫バス」を利用すれば「盛谷」「古江」「垂水」等の比較的高齢者の多い区から行くことができるものの、20分徒歩圏内に含まれるほとんどの区では高齢者が少なく、高齢者の生活のみのことを考えればもう少し北東に位置する買い物施設があることが望ましい。
また、島の東側および南側の海岸に位置する「外表」「岩白」「三里浜」などは、徒歩圏内には大型のスーパーマーケットがないことや、「上の谷」にいたっては「さんようバス」が運行を停止すると「おと姫バス」の利用もできない状況となり、これらの地域の高齢者の買い物をサポートする施策が今後望まれる。
2)病院と将来の高齢者の人口分布
図19は、図18の分析同様、島内の病院と2045年における75歳以上の高齢者の人口分布を示したものである。なお現在島内には、旧大崎町に「寺元医院」「円山医院」の2つの内科、南側の海岸には島内で最も大きい「ときや内科」と「田村医院」、北部に位置する島内で唯一外科を専門とする「射場医院」の計5つの病院がある。

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図19 2045年における75歳以上の人口分布と島内の病院の位置

このをみると、「寺元医院」「円山医院」および「射場医院」の3つの病院は、いずれも20分徒歩圏内に高齢者の多い「区」が含まれており比較的良好な場所に位置している。しかし、ほとんどの高齢者が5つの何れの病院へも「おと姫バス」を利用することでいくことができるものの、たとえば、島の北部に当たる旧東野町に住む高齢者は、島で最も大きい「ときや内科」へは複数の路線を乗り継ぐ必要があり、その逆に、島の唯一の外科が専門である「射場医院」へは島の東南部からは同様に複数の路線を乗り継ぐこととなり、必ずしも利便性が良いとは言えない。こうしたことから、今後は「おと姫バス」などの公共交通機関の充実が不可欠で、高齢者の通院行動などを詳細に分析することで、バスの路線やダイヤのあり方を検討していくことが必要となろう。

4.結論

本研究では、2005~2010年の住民基本台帳による人口データをもとに、「コーホート変化率」を用いることで大崎上島の将来の人口の推移について分析した。以下では本研究で得られた成果を要約する。
1)大崎上島全体を対象として、2045年までの人口および高齢化率の推移について分析を行った。その結果、人口は5年ごとに約1,000人ずつ減り続け、2010年に8,140人であった人口は2045年にはその30%ほどの2,365人になってしまうことがわかった。また、現在上昇傾向にある高齢化率は2015年の47%をピークに減少し始め、2035年の40%を境に再び上昇すると予測された。
2)大崎上島の「区」ごとに2045年までの人口や高齢化率の推移を分析した。この結果、人口推移の分析では、すべての「区」で人口が減少していき、特に山間部だけではなく四国側の海岸沿いの区では2025年頃から100人を下回る区が目立ちはじめ、2045年には全37区中28区が100人を下回ると予測された。また、高齢化率の分析では、比較的人口の多い区に見られる「高齢化率に大きな変化が見られないもの」、旧木江町などに見られる「上昇傾向が続くもの」、比較的人口が少ない区にみられる「多少上下する区もあるが全体的に減少傾向にあるもの」のおよそ3つの傾向がみられた。
3)今後車の運転が困難となり移動に不自由を感じると思われる75歳以上の高齢者の将来における人口分布と買い物施設や病院の場所について分析した。まず、島内に2つあるスーパーマーケットについて見たところ、旧大崎町にある「ユアーズ」では、徒歩圏に高齢者の多い区の主要部分が含まれていることに加えて、高齢者の人口が比較的多く分布している地域からも「おと姫バス」により行くことができるなど、良好な位置に立地しているものと考えられた。一方、旧東野町にある「パルディ」については、「おと姫バス」を利用すれば比較的高齢者の多い区から行くことができるものの、20分徒歩圏内のほとんどの区では高齢者が少なくなっていた。島内の病院について見たところ、「寺元医院」「円山医院」および「射場医院」の3つの病院は、いずれも徒歩圏内に高齢者の多い区が含まれており比較的良好な場所に位置しているが、島内で最も大きい「ときや内科」や、島内唯一の外科「射場医院」へは、コミュニティバスを複数の路線を乗り継ぐ必要があり、必ずしも利便性が良いとは言えなかった。
今後の課題としては以下の点があげられる。
1)本研究で行った人口推計は、島全体を対象としたものと「区」ごとに行ったものの総計とでは差がでてしまうなどの問題があった。今後は、「コーホート変化率」や「婦人子供比」などを1つの基準年から求めるのではなく、複数の基準年から推計するなどより安定した推計方法を考えていきたい。また、人口の非常に少ない区では本研究で用いた方法では多少予測に無理な部分もあり、ある程度区の統合を行い分析する必要もあろう。
2)本研究では、高齢者の人口分布と「買い物施設」および「病院」の位置について分析したが、今後は年少人口と中学校や小学校の位置、さらには、フェリー乗り場や高速船の港、バス路線のあり方などを、将来の推計人口の分布からその妥当性を検討したい。また、今回はこうした分析を区単位の人口分布により行ったが、本来こうした分析は一定の面積で分析対象をメッシュ状に分類し、それぞれのメッシュ内の人口により人口分布を表す方がより適切な結果を得ることができる。今後はこうしたメッシュ状の人口分布の作成についても検討したい。

参考文献
1)和田光平:Excelで学ぶ人工統計学、オーム社出版、2006年9月.
2)岡崎陽一:人口統計学[増補改訂版]、古今書院出版、1999年5月.
3)林・一之瀬 他:撤退の農村計画 -数値で見る将来の農村-http://tettai.jp/info/info-05.php
4)岡山正人:過疎・高齢化地域に住む高齢者を対象としたモビリティと生活満足度に関する意識構造分析―大崎上島を事例として-,日本都市計画学会都市計画論文集,No.43-3,pp.901~906,2008年10月


原稿受理:2014年4月 公開日:2014年5月25日

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