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高齢者見守り

高齢者見守りシステムの開発

穆 盛林(電子制御工学科)

概要 現在,日本では高齢者人口が年々増加し,それに伴うさまざまな社会問題が顕在化している。特に離島地域においては,それがさらに深刻化している。見守りの負担を軽減するため,本研究では非接触型センサを用いて高齢者の見守りシステムを開発し提案した。このシステムは2種類の非接触型センサを用いて人間の動作検知ができることを明らかにした。この段階で作成したシステムは安価で,配置しやすく,プライバシーを侵害しないという利点がある。これからは,提案したシステムを複雑な環境に応用するため,複数種類の動作検知センサを導入することを検討する。そして,配置しやすくするため,無線端末などでパソコンに送信できる機能の追加を計画している。

キーワード 研究/高齢者問題,離島/安否確認,動作検知,輝度分布・超音波センサ

1.はじめに

現在,日本では高齢化が進んでおり,高齢者の人口に占める割合が年々増加している。特に離島地域においては,高齢化に伴う社会問題が深刻化している。2010年の時点で,大崎上島の総人口は8,448人,そのうち65歳以上の高齢者は3,616人となっており,全体の4割以上を占めている。それに伴い,独居高齢者が増加することは,日常生活において高齢者の安否確認を行う見守りの役割の必要性が大きくなることを意味する。地域社会において,見守りの役割が機能していなければ,一人暮らしの高齢者の転倒などの事故が起こった際に,誰も状況がわからない,助けられないという危険性がある。現状では,特に独居高齢者の生活安全管理が十分ではないと考える。そのため,本研究では非接触型センサを用いて高齢者の見守りシステムの開発と提案を行った。

2.研究目的

今現在応用されている見守りシステムでは,監視カメラや赤外線センサを使用するのが主流である。先行研究の見守りシステムでは,高価で,配置をしにくく,プライバシー侵害の可能があるなどの問題点がある。そこで,本研究では,非接触型センサ(超音波センサ,輝度分布センサ)を用いて,上記の問題を解決するため,人間の動作検知による見守りシステムの開発を行った。

3.超音波センサを用いた動作検知

超音波センサとは,送信機により超音波を対象物に向け発信し,その反射波を受信機で受信することにより,対象物の有無や対象物までの距離を算出する機器である。超音波の発信から受信までに要した時間と音速との関係を演算することでセンサから対象物までの距離を算出できる。本研究では超音波を用いて人間の動作検知システムを開発した。設計した方法では超音波センサを2つ使用すると,単純な環境での人間の動作検知を行うことである。図1が示しているのは実験用の超音波センサと制御器である。

検知性能と検知領域が十分かどうかを確認するため,実験環境は図2の示すような障害者用トイレと想定している。被験者の入室時,退室時,トイレ使用中 (座っている時),転倒した時に2つのセンサ初期値200[cm]からの距離変化を測定する設計とした。図3が示すのは5分間設定のトイレを正常使用するときに2つの超音波センサの信号変化である。図4が示すのは使用中に異常(転倒)があるとき2つの超音波センサの信号変化である。設定条件により2つのセンサの検知信号変化により被験者の使用する時転倒や事故の有無が判断できると考えられる。

4.輝度分布センサを用いた動作検知

本研究ではプライバシーを保護するため,二次元画像データを取得せず,一次元輝度分布を取得して人物検知を行う。CMOSイメージセンサとロッドレンズを組み合わせて製作した(図5)。CMOSイメージセンサは,安価で高機能となっている。ロッドレンズは,一次元の光をより多くセンサに入射させるため用いる。人物の状態を検知する方法は,背景差分法を用いる。この手法はシンプルでよく用いられるため,本研究ではこの手法を用いて人物の状態検知を行う。まず,人物がいない状態の輝度を取得する。次に,人物のいる状態の輝度を取得し,初めに取得した輝度との差分を求める。人物のいる部分だけ差分が現れるため,その差分のピーク位置や重心によって人物の状態検知を行える。あらかじめ設定値を決めておき,差分がその設定値を上回ったら,人物が検知できたと分かり,上回らなかった場合は人物がいないと分かる。

図6のように被験者が立っているとき輝度分布の値がより高くなることがわかった。座った時の状態と転倒した時の状態を図7図8のように示す。上下の状態は,重心により判別する。設定値を下回ったら人物が転倒していると分かり,下回らなかったら重心の変化量により人物は立っている,もしくは座っていると分かる。

5.まとめ

本研究では,高齢者の安否確認のため,見守りシステムの開発を提案した。この段階で,見守りシステムの動作検知センサを開発した。応用したのは2つの非接触型センサ(超音波センサと輝度分布センサ)であり,単純な環境で人間の動作検知ができることを検証した。提案したシステムの有用性を実機実験で検証を行い,人物の動作を検知できることを明らかにした。提案した検知システムは,プライバシーを保護しつつ,人物の状態を把握できるため,幅広く使用されている監視カメラを使用できないトイレや浴室で使用できる。そして,低コストで製作が可能であり,一般の家庭でも負担できると考えられる。
今後は,提案したシステムを複雑な環境に応用するため,複数種類の動作検知センサを導入することを検討する。そして,配置しやすくするため,無線端末などでパソコンに送信できる機能の追加を計画している。

(原稿受理:2014年2月 公開日:2014年3月14日)

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