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認知症予防

高齢者向け認知症予防リハビリテーション支援システム

岩切 裕哉(流通情報工学科)

概要 本研究では,離島に住む高齢者を対象として認知症の予防や運動機能の維持に関する問題に取り組む。高齢化社会を迎え,様々な要望に応えたリハビリテーションへのニーズが高まっている。本研究ではICT技術を活用し,介護福祉施設で行われているリハビリテーションに娯楽性を加えた,リハビリテーション支援システムを開発した。開発したシステムを介護福祉施設において実験したところ,利用者は楽しみながらレクリエーションに取り組むなど良好な反応を得た。

キーワード 認知症予防/リハビリテーション/シリアスゲーム


この支援システムの一事例であるプログラム「USAKAME-次世代娯楽型リハビリテーション支援システム」(情報工学科学生チーム:山根 奈々、Hadinata Ignatius Steven、倉田 菜季、大野 信康)は、2013年度キャンパスベンチャーグランプリ(日刊工業新聞社、日本経済団体連合会、他)において中国地区・最優秀賞及び全国大会・審査員特別賞を受賞した。


 1.はじめに

日本の抱える大きな問題の一つとして少子高齢化問題がある。本校のある大崎上島町においてもその問題は顕著であり,大崎上島町の高齢化率は40%を超えている。本研究では,認知症の引き起こす様々な症状が高齢化問題を困難にしていることから,離島に住む高齢者を対象として認知症の予防や運動機能の維持に関する問題に取り組む。
介護福祉施設では,認知症の予防を目的として,高齢者の持つ運動能力を維持向上させるために,音楽の演奏や歌を歌う,絵を描く,簡易的な運動を行うといったことなど様々な取り組みが日常的に行われている。しかし,介護福祉施設では職員の持つ仕事が多く負担が大きい。そのため,職員が施設利用者に,つきっきりで対応することは難しい。一方,超高齢化社会を迎え,様々な要望に応えたリハビリテーションが望まれている。そこで,ICT技術を活用することにより,リハビリテーションに娯楽性を加えた,リハビリテーション支援システムを開発することを目的とする。本システムを利用することにより,施設職員の負担軽減が見込まれ,これまでより多くのサービスを施設利用者に対し行うことが期待される。
本研究では,体の動きを取り込むセンサを用いた上半身運動による利用者登場型リハビリテーション支援システムと,コントローラを用いた娯楽型リハビリテーション支援システムの2種類のリハビリテーション支援システムについて取り組む。
本研究は,流通情報工学科の卒業研究,および産業システム工学専攻の特別研究として実施した。

2.上半身運動による利用者登場型リハビリテーション支援システム

2.1 概要

本システムの特徴は,介護福祉施設で行われている絵や音楽のほか,手や腕の動きなどレクリエーションの要素を取り入れたところにある。普段行っているレクリエーションの動作を取り入れることにより,利用者にとって受け入れられやすい。また,利用者の操作に連動して画面が変化することにより,利用者の脳に刺激となりリハビリテーションの効果が期待できる。現在,ゲームは4種類(旗揚げゲーム,しゃぼん玉をつぶすゲーム,虫取り,シーソー)用意しており,ただ腕を動かすだけの退屈なリハビリテーションと比べると意識せずに楽しみながらリハビリテーションを行うことができる。
本システムは,図1に示すような構成であり,人の動きを認識する非接触型のセンサー(Microsoft Kinect)を用い,手を動かすだけで操作できる。コントローラ等を持って操作する必要がないため,コントローラを投げてしまうということがなく安全に使用できる。

2.2 成果

本研究では4種類のゲームを開発した。ゲームは図2に示すように画面に表示されたイラストと音声での指示のみで直感的にゲームをすることができるため,利用者に分かりやすいように配慮している。介護福祉施設において実験を行った結果,多くの利用者がルールや内容も理解してゲームを楽しんでいた(図3,図4)。さらに,介護福祉職員にアンケートをとった結果,リハビリテーションの企画・事前準備に負担を感じており,また現在のリハビリテーションが不十分であると感じる職員が多くいた。そのため,ICTを活用する本システムの必要性が見込まれる結果となった。

2.3 まとめ

介護福祉施設において普段行っているレクリエーションの動作をゲーム化したリハビリテーション支援システムを開発した。介護福祉施設において実験を行った結果,利用者の多くはルールや内容も理解してゲームを楽しんでいた。また,それを見ていた周りの利用者も,真似をして体を動かすなど,ゲームを楽しんでいる様子がうかがえた。

3 .コントローラを用いた娯楽型リハビリテーション支援システム

3.1 概要

多くの介護福祉施設で行われているグーパー運動(手を握ったり開いたりする運動)を,「握る」という操作ができるコントローラを使ったリハビリテーション支援システムの開発を行った。また,対象者が子供の頃に慣れ親しんだ要素である音楽や童話を盛り込み,ウサギとカメを題材とした。ウサギとカメが競争をする内容として,ウサギとカメの形をしたコントローラを,画面の指示通りタイミングよく握ったり離したりすることで,画面に表示されたウサギやカメが走り出すものである。
コントローラには握った状態を判断するひずみセンサや,振っているかを判断するための加速度センサを搭載することで,グーパー運動や,腕を振る運動を行うことができるようにした。

3.2 成果

開発したシステムは,図5に示すような画面で,コンピュータのウサギとかけっこで対決する。左から流れてくる指示のタイミングに合わせてコントローラを握ったり離したりする。うまくできるとプレイヤーの動かすカメが速く走る。また,高齢者は自分で難易度を選択できないため,負けすぎないまたは勝ちすぎないように難易度をゲームの進行に応じて変化させている。
介護福祉施設において実験を行ったところ,“あみぐるみ”でできたコントローラに興味を持ってくれる高齢者が多く,可愛い見た目だと喜んでもらえることが分かった。また,「あみぐるみを編むこともリハビリテーションになるので,オリジナルのコントローラが作れて良い」「高齢者向けのリハビリテーションに限らず,幼稚園などでの活用も見込める」などの意見もあった。

3.3 まとめ

介護福祉施設に設置した際,コントローラの可愛い見た目から高齢者の方々に好感をもってもらうことができた。そのため,スムーズにメインのゲームに参加してもらうことができた。ゲームをプレイした高齢者は,補助の職員と一緒に「握る・離す・振る」の運動を楽しそうに行っていた。

4.おわりに

本研究では,体の動きを取り込むセンサを用いた上半身運動による利用者登場型リハビリテーション支援システムと,コントローラを用いた娯楽型リハビリテーション支援システムの2種類のリハビリテーション支援システムに取り組んだ。開発したシステムを介護福祉施設において実験したところ,利用者は楽しみながらレクリエーションに取り組むなど良好な反応を得た。
今後の課題として,認知症予防や運動機能の効果の検証することが必要である。効果の検証は,継続的に提案システムを使用してもらい,身体機能を計測することで行う。


(原稿受理:2014年2月 公開日:2014年3月13日)

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