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介護記録の電子化

介護記録等の電子化による介護サービスの質的向上の試み

大和田 寛(電子制御工学科),岩切 裕哉(流通情報工学科)
長谷川 尚道(地域連携コーディネータ)

概要 現在,介護施設等では,アセスメントシートやサービス利用者の利用状況等の業務日報を作成しているが,日報の作成には多くの時間がかかり,その結果,時間内に提供できる介護サービスの時間が減少しているという問題がある。本研究では,それら事務作業についてICT技術を適用して効率化し,介護サービスの質的向上に貢献できるシステムの開発を行った。また,外国人労働者にも扱いやすくできるようにするため,介護の専門用語を絵文字に置き換える等の特徴を備えた業務日報管理システムについても開発を検討した。これによって特に離島地域における介護施設の人材不足解消への一助となるシステムの開発を目指した。

キーワード 介護記録/電子化/外国人労働者

 1.はじめに

介護施設等では,アセスメントシートやサービス利用者の利用状況等の業務日報を作成している。特に,業務日報は,毎日のサービス利用者の食事,排泄状況,入浴の有無等を明細に記述する必要があり,それらの業務作業にかかる時間は多大なものとなっている。すなわち,これらの業務日報を作成する時間分,実際に利用者が受けられるサービスの時間が減少している。介護施設側としては,これらの日報作成の事務作業を効率化し,その分を利用者へのサービスに充てたいと考えているが,業務日報も利用者の状況把握等のために重要なものであり,これらを簡素化することは困難である。

また,高齢化により介護施設への利用者が増加する中(平成27年度末で545.7万人となっており,平成13年度末に比べ258.0万人の増加),介護従業者不足(平成25年度の介護士数は171万人1)が指摘されており,日本人のみでサービスを維持することは,困難になってきている。そこで介護施設では外国人を採用したいと考えているが,資格取得や実際の業務において外国人にとって最も困難なものは日本語である。特に医療や介護の専門用語が多数存在し,ニュアンスを含めて利用者の状況を正確に把握し日報に記述することは,日本語を母国語にしない者にとっては,非常に困難なことであると予想される。

また,既に市販されている同種の電子化された医療介護ネットワークシステムでは,多くの機能が搭載され高機能であるため,操作が複雑で操作性が難しく,操作方法の習得に時間がかかる上に,特に外国人への対応も未だなされていない。また,施設ごとに特有な細かいニーズに対応する必要もあり,筆者らが聞き取り調査を行った施設からは,スムーズな導入が難しい等の指摘があった。

本研究では,これらの問題点を解決するため,介護施設等におけるアセスメンントシートや業務日報を簡素な形で電子化し,さらに外国人でも業務日報作成がより容易にできるシステムの開発を目的としている。このシステムによって,業務日報作成の事務作業を効率化し,その結果として実際の介護サービスに充てる時間を増やすことができる可能性がある。さらに電子化された業務日報を通して外国人労働者と日本人との連携がより図られ,介護サービスの品質向上に貢献できる可能性も期待できる。

2.教育研究内容

2-1 介護記録電子化システムの概要

本研究目的を実現するため,図1のような介護記録電子化システムを検討している。介護記録のデータ入力には,近年安価で普及しているタブレット型端末を利用する。
入力されたデータは,サーバに送信・蓄積され,記録内容の確認後,介護記録が指定の書式に従って印刷される。なお,これらの業務日報やアセスメントシートは個人情報であるため,サーバ上には蓄積せず,管理者が入力内容を確認して印刷後,データを完全に消去する機能の実装を予定している。
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2-2 外国人職員への対応

データを入力するアプリは,入力作業の省力化と日本語に不慣れな外国人労働者でも容易に扱えるように,アイコン等で項目を選択する形式のアプリを考えている。このように日本人・外国人の両者にわかりやすいアイコン等を利用した入力形式や,またフローチャート方式で業務日報を記録するようにすれば,日報作成の手間や入力ミスに削減できる可能性がある。

3 .成果

これまで介護施設に実地調査を行うとともに,施設職員等から聞き取り調査を行い,最適な介護システムの電子化について検討し,システムの開発を行ってきた。現在まで作成した,タブレット端末を利用して介護記録を入力するアプリの入力画面の例を図2に示す。
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この介護記録入力アプリは,選択した結果に応じて,選択肢が切り替わるシステムを導入しており,入力の手間を削減するとともに,入力ミス等を減らすための実装を予定している。また,図3に介護記録のデータ構造の一部を示す。
なお,今回のシステムの開発にあたっては,介護事業所に合わせた入力項目に対応したシステム構築を予定しているため,施設に応じて柔軟に対応できるデータベース構造に関する検討が今後必要になる。
また,試作したシステムの評価であるが,今後,大崎上島町社会福祉評議会の協力を得て,システムについてのアンケート調査を実施する予定である。アンケート調査によって得られた知見をシステムの改善に反映し,また日本人・外国人の双方が使いこなせるように,文化的背景等も考慮して各項目をアイコン化し,より使いやすいシステムの開発を目指す予定である。
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4.まとめ

介護福祉施設における事務作業効率化のため,業務日報電子化システムを提案し,アプリの制作を行った。今後,ネットワークシステムの構築や,外国人にも対応したアイコンを使った入力方法等に関する検討を行う予定である。また,作成したシステムに関するアンケート調査を行って業務日報電子化システムの改善への知見を得て,システムを完成させる予定である。

参考文献
1)平成26年度版高齢社会白書 内閣府 保健指導リソースガイド

(公開:平成28年4月)

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