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電力の見える化

電力の見える化による省エネルギー実験の実施検討に関する視察

濵田 朋起(商船学科),岡村 修司(流通情報工学科)
馬場 弘明(地域連携コーディネータ)

概要 近年,スマートグリッドが注目され,それによりユーザーの電力使用を「見える化」できるようになった。電力使用を「見える化」することにより,無理のない自発的な節電行動を喚起し,省エネ活動を促進できる可能性がある。そこで今回は,“電力の見える化”による省エネ実験を実施している横浜八景島に視察を行い,本校および大崎上島全体への導入に向けての確認,問題点などの調査を行った。その結果,「電力の見える化」システムのハード面およびソフト面の構築について実際に見て確認することができたとともに,「電力の見える化」システムを用いた省エネ活動の利点,問題点を知ることができた。今後はまず,本校で「電力の見える化」システムの構築を進めていく。そして実験を実施し,成果および問題点の検証を行う。将来的には,地域全体へ発展させ,本校が離島におけるエネルギー対策の拠点を担うことを目指す。

キーワード スマートグリッド/電力の見える化/省エネルギー

1.はじめに

大崎上島は,中国電力の送電網が完備していることから,エネルギー需要に関しては他の離島より恵まれた環境下にあると思われる。しかし,地球温暖化とも密接に関係するエネルギー問題は大崎上島でも例外ではなく,従来型の発電システムに再生可能エネルギーを導入した高効率の電力供給システムの促進とともに,省エネルギーの一層の促進が必要である。
大崎上島に立地している本校においても,教室の不要照明の消灯,空調機器の温度設定などによる省エネ活動を行ってきた。ただし,漠然と「省エネ,省エネ」と呼びかけて指導していたに過ぎず,具体的な削減目標および節電効果を提示することができなかった。
近年,スマートグリッド(smart grid)が注目されている。スマートグリッドとは,ICT(情報通信技術)により,双方向につながることにより,ユーザーと情報や電力のやりとりをし,柔軟な電力供給を行うことを目指す技術のことをいうが,それによりユーザーの電力使用を「見える化」することが可能となった。省エネ化を目指すためには“電力の見える化”が重要な役割を担っており,現在多くの企業から様々なシステムが提案されているが,その多くは大規模,複雑化している。東京海洋大学と東洋電機製造(株)で共同開発した「電力の見える化」システムは,安価で,簡易な設備によって“電力の見える化”による省エネ実験を行うことができ,各地で実験を実施中である1)。しかし,大崎上島のような離島における実験成果はまだ見られない。
そこで今回は,産・学・官の連携による“電力の見える化”のモデル事業として,東京海洋大学と共同で実験を実施している横浜八景島を視察し,本校および大崎上島全体への導入に向けての確認,問題点などの調査を行った。

2.視察内容

平成27年8月21日,電力の見える化による省エネルギー実験実施に伴う調査のため,図1に示す横浜八景島シーパラダイスを訪問した。
横浜八景島では,平成24年夏より電力の見える化による省エネ実験を実施しており,八景島内の事務管理棟および商業施設2),水族館3)の全体電力使用量をリアルタイムで示し,節電行動を促すだけで省エネ化が可能かどうかを調べている。その結果,電気料金に含まれる基本料金を大きく下げることが可能となり,年間約400万円のコスト削減が実現できたとしている1)。
そこで今回は,おもに次の2点について,調査・確認を行うこととした。

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図1 横浜八景島(上:外観,下:全体図)

2.1電力の見える化システムの構築

横浜八景島では,東京海洋大学で開発されたシステムを用い,東京海洋大学のシステムサーバを介してリアルタイムに電力使用量を閲覧できるようにしている。
東京海洋大学のシステムを用いた八景島での電力需要表示の例を,図2に示す。縦軸には時間を,横軸には電力使用量を示し,2分間隔で電力の状況を分かるようにしている。また節電目標の最大値以上を注意ライン(イエローゾーン),契約電力量以上を警報ライン(レッドゾーン)で示すことで,対象者への節電行動を喚起させるようにしている。
本校では,東京海洋大学で開発されたシステムを参考とし,本校だけでなく大崎上島全体へ拡げることを目指し,本校がその中心的役割を担うようにするため,本校での「電力の見える化」システムの構築を目指す。

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図2 電力需要表示(八景島)

2.2スマートメータの設置

電力の見える化を実施する際のハード面でのシステム構築は,図3に示すようにすれば良いことが分かっている。しかし実際には,スマートメータおよび受信装置はどのあたりに設置すれば良いのか,また電力使用量をリアルタイムに閲覧できるようにするためのネットワークはどのように構築すれば良いのかなどが不明確であったため,それらを確認するために実際の設置場所および設置方法を見せていただいた。
横浜八景島では,スマートメータは事務管理棟の中央管制室内にある配電盤に,パルス検出器,パルスセンサ,受信ユニットを直接設置していることがわかった。図4に,横浜八景島で実際に設置されているパルス検出器,パルスセンサ,受信ユニットを示す。また受信ユニットからの情報は,有線LANを用いて各方面に送信しており,本校の既設ネットワークを用いても対応可能であることが確認できた。
電力の見える化による設備維持費については,設置における初期費用のみであり,それ以外は機器が故障しない限りは全くかからないとのことであった。

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図3 電力の見える化システムの概要

3.成果

電力消費量を削減するためには,「電力の見える化」システムを導入するだけでは不十分で,横浜八景島では以下の節電行動の促進を呼びかけている。
<簡単な6つの具体的推奨行動>4)
(1)各自が適宜に電気使用量をPCや携帯端末で確認し把握する。
※ 目標削減に対する注意ゾーンを超えた場合は,以下の節電行動をとる。
(2)影響のない範囲での消灯
(3)パソコンをスタンバイ状態にする。充電の禁止。
(4)消費電力の大きい機器の使用を控え,使用する時間をシフトする。
(5)空調機の2℃設定温度上げ(事務所等,同時にブラインド,カーテン等を使用)
(6)従業員一人ひとりが,「節電する」という意識を持つ。

横浜八景島内にある商業施設は,経営者が異なる営利目的施設であるため,「電力の見える化」システムを用いた節電行動をどのように展開していくかが問題であったが,上述の呼びかけにより節電行動を促し,来場者の快適性や安全性確保の両立を実現することができたとのことであった。
しかし導入当初は,節電効果が確認できたが,長い期間が経過すると節電意識が徐々に下がっていることが問題であり,節電行動の啓発活動を定期的に実施し続けることが必要であるとのことであった。

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図4 スマートメータ(左:パルス検出器,中:パルスセンサ,右:受信ユニット

4.まとめ

今回の視察により,「電力の見える化」システムのソフト面およびハード面での構築に必要な事柄を,実際に見て確認することができた。また,「電力の見える化」システムを導入するだけでなく,それらを活用し継続して運用していくための啓発活動が重要であることも知り,大変有意義な成果を得ることができた。
今回の視察で得られた知見をもとに,今後は「電力の見える化」システムの構築を進めていく。そして,まずは本校で導入して実験を実施し,成果および問題点の検証を行うとともに,本校で継続して実施している環境教育に生かしていく予定である。将来的には,本校で得られた成果を公共施設や企業・工場などへ拡大し,大崎上島全体としての省エネルギー活動へ進化させていき,本校がその拠点を担うことを目指す。

参考文献
1) 刑部 真弘,「船舶を利用した防災スマートグリッド」,計測と制御,第53巻,第6号,2014年6月号,pp.1-5 (2014)
2) http://osakabe15.u.e.kaiyodai.ac.jp/108
3) http://osakabe15.u.e.kaiyodai.ac.jp/109
4) 横浜八景島シーパラダイスHP,「産・学・官の連携による「電力の見える化」の導入」,
http://www.seaparadise.co.jp/news/001965.php

(平成:平成28年4月)

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