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離島エネルギー開発

離島エネルギー開発に向けた海潮流測定

井田 徹哉(電子制御工学科)

概要 海潮流発電は経済的に自立可能な再生可能エネルギー源であり,島嶼沿岸域における海洋エネルギーの利活用として有望である。特に超伝導を利用した高効率な発電システムを取り込むことで,小規模で実用的な発電を実現し,離島社会への寄与が見込まれる。本事業では大崎上島沿岸で海潮流発電を行うための適地探索に関わる技術の蓄積と,周辺海域の基本情報の取得のために,水深7〜15mの海域を選んで海潮流測定を行った。その結果,大崎上島沿岸の流れは概ね穏やかであるが,小型機器用の発電は可能であり,本格的な発電には特に流れの速い海域を選んで発電用タービンを設置すべきことが明らかとなった。

キーワード 研究/電気電子工学/海潮流発電・再生可能エネルギー

 1.はじめに

平成19年に海洋基本法が制定され,全地球規模での低炭素・省エネルギー社会の確立が急務とされている。海洋エネルギーの有効利用は島嶼沿岸域における防災・安全対策,地域・地場漁業等のエネルギー供給,沿岸警備に関わる電力供給,海峡・橋梁の多機能化などとして広汎に資する。潮流や海流を利用した発電(以下「海潮流発電」という)は,風力発電における大気流に比較して,840倍もの高い密度の海水流からエネルギー変換により電力を得る。海潮流は変動予測のできるエネルギー源として経済的に自立が可能であり,数年後には発電コストが23〜26円/kWhになるとの試算1)もあり,他の多くの再生可能エネルギー発電と比べても十分に競争力がある。

2.研究内容

海潮流を水車で受けて回転子を回すことから,海潮流発電を実現するためには沿岸域の流速分布の把握と高い効率と安定な水車(タービン)及び発電機が必要である。次世代の回転機として内外で開発が進められている超伝導発電機は,強磁界を利用して小型・軽量化・高効率化を実現できる上に,同期リアクタンスが小さいため電力系統の安定度が高く,電圧調整に必要なリアクトル設備を削減できることから,小規模な発電に向いている。本事業は大崎上島を始め国内の島嶼沿岸域等における海洋エネルギーの利活用と電力供給に関するシーズの創出による離島社会の生活の向上と産業振興を目的として,超伝導発電機を採用した小規模かつ実用的な海潮流発電の実現に関わる実海域における評価試験のための適地探索を試みた。
超伝導海潮流発電機の開発では島嶼沿岸域等でのエネルギー回収システムの実践的な効率,立地性やタービン評価技術,超伝導発電機の電力変換,生態系への影響等を検討評価する。そのための立地としては,大崎上島の沿岸であり,有効な発電の可能な潮流があり,流速・流向の変化が少ない海域を決定する必要がある。本事業では,海潮流発電のための適地探索に関わる技術の蓄積と,大崎上島周辺海域の実情を観測するために,本校所有の小型練習船による流速測定を実施した。なお,本事業は卒業研究・特別研究の一環として実施しており,本校学生が島嶼地域への理解を深め,地域に貢献できる人材として成長することも目指している。

3 .成果

3-1 海潮流測定

測定は平成27年12月1日の13:30から17:00の間に実施した。測定には大崎上島周辺の11箇所を選んだ(図1)。これらの海域は大崎上島の沿岸で水深が5mから15m程度あって,船舶航路では無い海域である。当日は技術職員の操縦する小型練習船に報告者と電子制御工学科学生2名,専攻科産業システム工学専攻学生1名が乗船し,AからKまでの順に測定を実施した(図2)。測定項目は深度(DEFI-D・JFEアドバンテック製),塩分濃度及び水温(INFINITY-CT・JFEアドバンテック製),流速(INFINITY-EM・JFEアドバンテック製)の4項目である。各海域で停泊した小型練習船の上から,深度計を取り付けた水温塩分計と電磁流向流速計をそれぞれゆっくり海底へ向けて下ろし,深度毎に測定を行った。

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図1 海潮流測定海域 (出所:国土地理院「地理院地図(電子国土Web」)を元に作成
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図2 海潮流測定海域(左:電磁流向流速計/右:水温塩分計)

3-2 測定結果と考察

大崎上島の沿岸を一周して測定をした限り,塩分濃度及び温度はそれぞれ32.5psuと18.7℃でほぼ一定であった(表1)。報告者は水深7mから15.6m,平均11.5mで測定を行ったが,いずれの海域でも塩分濃度及び水温は深度に関わらず一定であった。一方,流速については海域毎に様々に異なり,また半数を超える海域で深度毎に流速の変化する傾向が見られた。
この測定結果を海水の状態方程式2)へ代入して計算すると,大崎上島沿岸の海水密度はρ=992kg/m3と求まる。海潮流発電のタービン出力P3)
P = 1/2ρAv3η ・・・・・・・・・・・・・(1)
となどいう式で計算できる。ここでA[m3]はタービン面積,v[m/s]は流速である。ηはタービン出力係数を表し,ダリウス水車の場合η=0.2〜0.3となる。平成24年から25年にかけて関門海峡で実施された北九州市と九州工業大学等による実験で使用された海潮流発電機と同じ断面積A = 1m3のタービン4)を使用したと仮定すると,測定において典型的な流速を示した海域Eでの出力は1.37〜2Wと小さく,最大流速の海域Kでも出力は9〜13.6Wに過ぎない。とは言え,この程度の電力でも防災保安機器,常夜灯,安全標識への電力供給に使用可能である。なお,タービン断面積を増やすことで出力を増加させることは可能であるが,小規模な発電システムの実現は難しくなる。
一方,(1)式に示す通り出力は流速の3乗に比例する。従って,より流速の速い海域を選択することで出力の効果的な向上が見込まれる。流速を海域Kの約2倍のv = 1m/sと仮定した場合,海潮流発電機の出力は約100〜150W,3倍のv = 1.5m/sになれば約330〜500Wへと10倍以上に急増する。従って,本事業で測定を行った結果を元に,より流速の速い海域を選ぶことによって,1台の海潮流発電機からでも一般的な電気機器や産業機器の常時駆動が可能なだけの電力が得られる。

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4.まとめ

本事業では大崎上島での超伝導海潮流発電試験の適地探索を目指し,海域測定に必要なノウハウの取得と,大崎上島沿岸の基本的な情報を取得する目的で海潮流測定を行った。11箇所の海域に船舶を停泊して海潮流の測定を実施した結果,常時使用する小型機器のための発電に必要な電力が容易に得られる可能性が示された。一方,家庭用電力の代替供給あるいはそれ以上の電力を得るためには,大崎上島沿岸の中でも海潮流の速い海域を選び,発電試験の可否に関して評価検討を行う必要がある。

参考文献

1) NEDO:再生可能エネルギー技術白書 第2版 第6章 (2014)
2) UNESCO:Oceanographic Tables and standards,(JPOTS). Sidney,B.C.  Canada,1-5 September 1980. Sponsored by UNESCO,ICES,SCOR,IAPSO, UNESCO Technical papers in marine science, No.36, pp.17-19 (1981)
3) 平本敏弥:潮流発電装置に関する研究, 海上保安庁 研究成果報告書 (2000)
4) 関門海峡潮流発電設置推進事業HP(北九州市)「関門海峡における潮流発電について」, http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000102525.pdf

(公開:平成28年4月)

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