国立広島商船高等専門学校
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消費電力見える化システム

消費電力の見える化システムの開発

岡村 修司(流通情報工学科),濵田 朋起(商船学科),馬場 弘明(地域連携コーディネータ)

概要

校内情報ネットワークを通じて電力の使用量をリアルタイムに配信し,校内に設置されているコンピュータに限らず,スマートフォンやタブレットからも閲覧できる消費電力の見える化システムの開発を行っている。
環境学習などで本システムを活用することにより,一人ひとりの省エネルギー行動を無理なく促進させ,小さな省エネルギー行動でも,皆で取り組めば大きな効果を生むことを理解させることが目的である。システムはスマートメータ,受信ユニット,見える化サーバから構成されており,卒業研究の学生が開発を行っている。
将来的には,周辺地域の行政組織,企業,教育機関,公的機関などにも本システムの導入を提案する。本校に設置されている見える化サーバを活用することで,導入の負担を抑え,本校が地域の省エネルギー行動の中心的役割を担うことを目指す。

キーワード 消費電力の視覚化/スマートメータ/省エネルギー行動

 1.はじめに

福島第一原子力発電所の事故以来,安心・安全なエネルギー源の重要性が高まっている。再生可能エネルギーが注目されているが,その多くは天候・気象から影響を受け,安定的にエネルギーを供給することが難しいのが現状である。
一方で,電力の使用量を減らすことで,新規の発電設備や送電設備の建設を抑制する効果が期待できる。生活の質をできるだけ落とさずに,効果的で無理のない省エネルギー行動を促進させることが重要である。
そのような省エネルギー行動の促進を支援するため,電力消費者に電力の使用状況をリアルタイムで提示する「消費電力の見える化システム」の開発を行っている。
本報告書は,消費電力の見える化システムに関する技術的概要と,技術者教育の一環として,効果的で無理のない省エネルギー行動の促進を支援するための学内における取り組みについて報告する。

2.消費電力の見える化システムの概要

電力消費者に電力の使用量をリアルタイムで提供し,コンピュータだけでなく,スマートフォンやタブレット型端末での閲覧も行えるよう,システムは本校の構内情報ネットワーク上に構築する。本システムはスマートメータ,受信ユニット,見える化サーバより構成される(図1)。本システムは教室や研究室などの個別の消費電力量ではなく,本館や実験棟などの建屋ごとの消費電力量の表示を行う。

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2-1 スマートメータ

スマートメータは双方向通信機能を備えた,電力消費量を測定するシステムである。 従来のアナログメータと違い,測定した電力消費量をリアルタイムで無線送信することができる。電力会社からの遠隔操作により,サービスの接続・切断などができ,電力供給量の制御も可能である。
本システムでは,電流を計測する電流センサ(東洋電機製造株式会社のμTURTLE-I)1)を用いる。通信には315MHz帯特定小電力無線を使用しており,電波伝搬路に障害が無い場合の見通し通信距離は20mである。対象とする電線をスマートメータのCT部でクランプすることで,電流を計測することができる。

2-2 受信ユニット

受信ユニット(東洋電機製造株式会社のμTURTLE/RW)2)はスマートメータからのデータを受信し,受信したデータを一定時間ごとに見える化サーバに転送する。見える化サーバとは校内情報ネットワークで接続されている。受信ユニットはWebDAV4)によりHTTPサーバに接続し,受信データを送信する。
WebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)とは,HTTPの拡張仕様であり,RFC2291,RFC2518,RFC3253により定義されたプロトコルである。HTTPをベースとして,分散環境における読み込み・書き込みやバージョン管理を行う機能を提供する。ApacheやIISなどの代表的なHTTPサーバが対応しており,特定のOSに依存することもないので,様々な環境で利用可能である。
WebDAVによる書き込みを可能にする3)ため,「WebDAVパラメータ設定」,「機器コード設定」,「WebDAV書込保守設定」を行う。
(1)WebDAVパラメータ設定
「WebDAV書込設定」画面にアクセスし,WebDAV書き込みに必要なパラメータの設定を行う。設定するパラメータには,WebDAVによる書き込みの有効または無効,書き込み先サーバのアドレスとフォルダ名,ユーザ名とパスワード,会社コード,施設コード,開始時刻,書き込み間隔などがある。
(2)機器コード設定
「センサ一覧」画面で,登録したいセンサを指定する。電流センサは「電流センサ登録」画面で登録する。登録内容は,電流センサの名称,ID,変流比,CTタイプ,収集状態の有効または無効,機器コードなどである。
(3)WebDAV書込保守設定
「メンテナンス」画面で,保守用の各種パラメータの設定を行う。設定するパラメータには,ファイル出力モード,WebDAVタイムアウトがある。

2-3 見える化サーバ

見える化サーバは,受信ユニットから送信されてくるデータをグラフ化し,クライアントから閲覧できる環境を実現する。OSはセキュリティが高く,安定的に稼働するCentOSを,HTTPサーバはApacheを採用した。電力の消費データをグラフ化するためのプログラムはPHPで記述している。
受信ユニットとの通信はSSLを用いる。Apache 2.0以降では,WebDAVはパッケージに同梱されているので,インストール作業は不要であるが,WebDAVを有効化し,受信したデータを保存するための設定を行う。

3 .成果

消費電力の見える化システムは,効果的で無理のない省エネルギー行動の,より一層の促進を支援するためのシステムである。本システムを活用することで,環境学習と連携した授業を実施し,教育効果の定着と向上を目指す。我々は,そのような教育は技術者教育に不可欠であると考えている。将来的には,正式な教育領域としてカリキュラムに組み込み,全学生を対象に実施することを計画している。
そのために,全学的なコンセンサスを得て,学内の体制を整える必要がある。現在,カリキュラム作成の作業グループへの参加を募っており,承諾いただいた教員が5~6名になった。事務との協力体制についても打ち合わせが進んでおり,早急にカリキュラム案を作成し,教務関係者との打ち合わせを実施する予定である。
これといった具体的な成果はまだないが,本システムの導入を周辺地域に提案し,省エネルギー行動を推進する中心的な役割を担いたいと考えている。

4.まとめ

効果的で無理のない省エネルギー行動を支援するために開発を行っている,消費電力の見える化システムの概要について説明した。本システムの開発は本科の卒業研究として行っている。開発を担当した,流通情報工学科5年生の上利 茜さん,平田 隆浩君,要田 翔伍君,パチアリー ラオリー君に感謝の意を表する。
本システムを活用することで,効果的で無理のない省エネルギー行動がより一層促進されることを期待している。技術者教育の一環としてカリキュラムに組み込むため,現在進めている学内的な取り組みを今後ますます活性化させたいと考えている。
本システムが稼働し,省エネルギー行動を促進させるための効果的な教育方法に関する知見が収集できれば,周辺地域の役場,企業,病院,教育機関などに導入を提案する予定である。
最後に,電力の見える化実験およびシステムの開発に対して,貴重な情報を提供だけでなく,関係各位への働きかけを行って頂いた,東京海洋大学海洋工学系海洋電子機械工学部門の刑部真弘教授に心より感謝申し上げる。

参考文献
1)東洋電機製造株式会社:μTURTLE 取扱説明書,第1.7版,(2013)
2)東洋電機製造株式会社:μTURTLE-RW 操作マニュアル,第4.1版,(2013)
3)東洋電機製造株式会社:μTURTLE-RW WebDAV 書込説明書,第1.1版,(2013)
4)宮本久仁男,山田泰資,渡邊剛:WebDAVシステム構築ガイド,技術評論社,(2004)

(公開:平成28年5月)

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