国立広島商船高等専門学校
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離島のスポーツ振興策

離島におけるスポーツ振興策の検討について

柴山 慧,岩井 一師,朝倉 和,山下 航正,澤田 大吾(一般教科)
濵田 朋起,木下 恵介,瀧口 三千弘,徳田 太郎,岸 拓真,大内 一弘(商船学科)
芝田 浩,大和田 寛,藤冨 信之,今井 慎一(電子制御工学科)
田上 敦士(流通情報工学科)
竹内 康二,大浦 勝也,高橋 良幸,後藤 佑太(技術支援センター)

概要 平成27年度のCOC事業において,大崎上島のスポーツ振興における具体的な課題は何か,また,それを解決するための方策は何かということを検討した。体育授業への野外教育導入,著名人を招いての陸上教室や講演会の開催,小学校の体育授業への支援,運動部と地域のスポーツ団体との交流など,さまざまな活動をした結果,「練習仲間や対戦相手の不足」,「活動できるスポーツ種目が少ない」,「本土での試合や大会への交通アクセスの悪さ」,「指導者の不足」などが具体的課題であり,それを解消するためにも上記の活動を継続,拡充することが重要であるということが分かった。

キーワード 離島/スポーツ/地域/交流

1.はじめに

大崎上島は離島であるということからくる地理的課題,少子高齢化が進むことによる人口減少など,島内でスポーツ活動をするうえでさまざまな問題を抱えている。文部科学省は成人の週1回以上のスポーツ実施率が65%程度になることを目標にしているが,現在の大崎上島町は50%程度である。また,町民アンケートにおいてスポーツ・レクリエーション活動の満足度について調査したところ,「満足」,「まあ満足」と答えた割合は併せて43%,「どちらともいえない」が40.1%,「やや不満」,「不満」と答えた割合は併せて12.9%となっており,気軽に参加できるスポーツ活動への参加機会を増やすことが課題となっている(大崎上島町,2015)。
そこで,COC事業を通して大崎上島のスポーツ振興における具体的な課題は何か,また,それを解決するための方策は何かということ検討していきたい。

2.内容と成果

今年度は事業活動1年目であることを鑑みて,体育授業,学校運動部活動,地域のスポーツ活動などさまざまな活動を通じて,大崎上島のスポーツ振興における具体的課題の抽出と初歩的な解決方策の検討を活動目標とした。以下が実施した活動の一覧である。

活動名称 内容や目的 参加者数 頻度 本校担当者
①野外教育についての
研修会の開催
 本校の教育活動に野外教育を導入すべく
専門家を招いての研修会を開催した。
なお,対象者は本校教職員だけでなく島
内の学校教員も含めることで,相互の交
流ができることも目的とした。
約10名 年間1回 柴山 慧
岩井 一師
 ②体育授業への野外
教育の導入
Ex.クルージング体験,
校外ウォーキング,ア
ウトドア実習
 離島という自然に恵まれた立地条件を
生かして,それを教材とする野外教育
を本校で実施し,おおさきかみじまで
のレクリェーション・スポーツ活動の
きっかけづくりとする。
 約420名
(本校1年
生~3年生,
5年生
 各学年が
年間1回程
柴山 慧
岩井 一師
竹内 康二
大浦 勝也
高橋 良幸
 ③オリンピアンによ
る陸上教室と講演会
 著名なオリンピック出場者を招き,子
ども対象の陸上教室,住民対象の講演
会を開催して,大崎上島のスポーツ環
境について考える機会を設ける。
 約200名 年間1回 柴山 慧
岩井 一師
 ④島内小学校への体
育授業支援
 本校の体育教員が島内の小学校へ出向
いて体育授業の支援を行い,子どもの
体力向上,体育嫌いの減少に貢献する。
 約20名 年間4日
程度
柴山 慧
岩井 一師
 ⑤本校陸上部と島内
中学校陸上部,島内
小学生陸上クラブと
の合同練習会
 本校グランドを使用して,島内の陸上
関係のクラブが協同して練習する機会
を作り,相互の交流や技能向上へとつ
なげていく。
 約100名 年間3回
程度
柴山 慧
濵田 朋起
木下 恵介
後藤 佑太
大和田 寛
芝田 浩
岸 拓真
澤田 大吾
 ⑥本校剣道部と島内
剣道クラブとの合同
練習会
 島内の剣道関係のクラブが協同して練
習する機会を作り,相互の交流や技能
向上へとつなげていく。
約20名 年間12回
程度
朝倉 和
山下 航正
田上 敦士
芝田 浩
 ⑦本校卓球部と島内
卓球クラブの合同練習
 島内の卓球関係のクラブが協同して練
習する機会を作り,相互の交流や技能
向上へとつなげていく。
約80名 週1回程
瀧口 三千弘
徳田 太郎
 ⑧本校硬式テニス部
と島内住民の合同練習
 本校硬式テニス部と島内のテニス愛好
家が協同して練習する機会を作り,相
互の交流や技能向上へとつなげていく。
 約20名 年間1回
程度
大内 一弘
藤冨 信之
今井 慎一

活動①については野外教育における基本的事項の学習ができただけでなく,講師の松本英樹氏(大阪教育大学附属高等学校平野校舎教諭)から多くの実践例を提示され,参加者にとって非常に有意義なものになった。また,島内の小学校教員と情報交換をする時間も設けることができ,生徒数が少ない小学校では体育授業において実施できるスポーツ種目が限られることなどが課題であるということを知ることができた

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写真1 松本氏による研修会

次に活動②については,実施後に参加学生に対してアンケート調査をしたところ,クルージング体験を通して80%以上の学生がマリンスポーツの楽しさに触れることができ,大崎上島周辺の自然資源について理解することができたと回答した。商船高専の本校だからこそできる今回の活動に非常に満足していたようである。また,実施後の休日に,島内の海水浴場へ遊びに行く学生をあちこちで見ることができた。このような活動が島内でのレクリエーション・スポーツ活動の充実につながっていくものと思われる。

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写真2 クルージング体験の様子

次に活動③については,バルセロナオリンピック4×100mR6位入賞の杉本龍勇氏を招き,陸上教室と講演会を開催したが,どちらも参加者が定員ぎりぎりまで達して大盛況のうちに終わることができた。島内住民からは「このような著名人が来てくれたことは初めてだ」という声も聞かれ,COC事業での地域貢献が十分にできたものと思われる。また,この日に大崎上島のスポーツ環境について尋ねるアンケート調査を実施したが,「練習仲間や対戦相手の不足」,「活動できるスポーツ種目が少ない」,「本土での試合や大会への交通アクセスの悪さ」,「指導者の不足」などを住民が具体的な課題として感じていることが分かった。

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写真3 杉本氏の陸上教室

次に活動④については,小学校での水泳授業,陸上運動のハードル走の授業において本校保健体育科教員が出向いて授業支援を行った。大崎上島には民間のスイミングクラブはなく,子どもたちの水泳能力の低さは大きな課題の一つである。本校学生の水泳授業の記録を見ても,50mクロールの平均タイムが大崎上島出身の学生は57.6秒,それ以外の学生の平均は45.3秒と12秒以上の差となっている。小学校において,水泳が苦手な子を集めた補習授業に本校教員も手助けし,水に顔をつけることさえ怖がっていた児童がバタ足で泳ぐことがでるようになり,子どもたちの技能向上に貢献することができた。また,ハードル走については本校の柴山が陸上競技を専門としており,研究でハードルを扱っていたこともあって,5・6年生の体育授業においてハードル走を指導した。結果的には約70%の児童が50mハードル走のタイムを向上させ,男子では小学校記録が塗り替えられた。
次に⑤~⑧については,本校の運動部活動と地域の同じスポーツ種目の団体が各個に協同した活動を展開することによって,相互の交流や技能の向上だけでなく,上記に課題としてあがっていた「練習仲間や対戦相手の不足」,「指導者の不足」の解消の一助になることも期待される。さらには,小・中学生が本校の練習環境や指導者に慣れ親しむことにより,本校入学者の増加につながる可能性も無視できない。この活動については,これからも継続していくこと,他の運動部でも同様の活動を行う必要がある。

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写真4 陸上部の合同練習の様子

3.まとめ

平成27年度の活動ではCOC事業を通して,大崎上島のスポーツ振興における具体的な課題は何か,また,それを解決するための方策は何かということ検討してきた。その結果,「練習仲間や対戦相手の不足」,「活動できるスポーツ種目が少ない」,「本土での試合や大会への交通アクセスの悪さ」,「指導者の不足」などが具体的な課題として判明した。そして,それを解消するために本校運動部と島内のスポーツ団体との交流を進めること,島内の自然資源を利用したレクリエーション・スポーツ活動の普及,本校教員と島内の学校教員との連携などが重要であることが分かった。

参考文献
1)N.エリアス,E.ダニング,訳 大平章:スポーツと文明化―興奮の探究―,法政大学出版局(1995)
2)山崎利夫・宮田和信:離島・僻地における社会体育の現状について:特にスポーツの種目に着目して,日本体育学会大会号(47),pp.403,社団法人日本体育学会(1996)
3)丸山富雄・本多弘子・仲野隆士・永田秀隆:離島におけるスポーツクラブの実態:宮城県牡鹿町網地島「長渡バレーボール愛好会」の事例研究,仙台大学紀要28(2),pp.101-108,仙台大学(1997)
4)大崎上島町:第二次長期総合計画,大崎上島町(2015)

(公開:平成28年4月)

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