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資料館収蔵物の調査・Web化

大崎郷土資料館収蔵物の調査とWeb化への取り組み

小河 浩(一般教科)

概要 大崎上島町には,大崎上島町役場大崎支所と同所に旧大崎町関連の民俗資料を収めた民俗資料館を持っている。COC事業の一環として,大崎郷土資料館とその収納物について調査を行い,Web化について取り組んでいる。収蔵物についてある程度の調査研究を行うことができた。郷土資料館には将来的な課題もいくつか見出すことができた。また,時代の要請に従い,地域の生涯学習教育の拠点などとして活用できる可能性を秘めていることなどがわかってきた。

キーワード 地域教育/離島社会/郷土資料館

 1.はじめに

大崎郷土資料館は,平成3年8月6日に開館され,平成8年6月1日現在での収納件数は1,435件,展示数は1,108件となっており,展示には大崎町郷土史研究会が協力した。しかしながら,インターネット検索ではほとんど情報を得ることができない。地域学習などの目的で地元の小学校に開放されることがあるが,頻度はそう多くない。係員は常駐しておらず,同じ敷地内にある町教育委員会・社会科教育課に依頼して,鍵を開錠してもらうようになっている(写真1)。COC事業の一環として大崎郷土資料館の収蔵物を中心に考察し,郷土資料館の特色および本館が抱える将来的な課題について明らかにするものである。

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写真1 大崎郷土資料館内部

2.内容

大崎郷土資料館の収蔵物について,まずは実物を実見して,分類調査することから開始した。細かい分類まではできてはいないが,目についた分だけ大まかに分けていくことにした。大崎上島は離島だけあって,船関係の展示が目立っている。当然のことながら,本校の所有するかつての練習船に関する資料も何点か確認された(1)。それ以外には,既に廃止された周辺の小島との連絡に使われた渡し船の備品などが充実していることがわかった。西側の壁面一帯には,戦前戦後のものらしいと思われるラジオなどの機器が展示されている。都市部では,これだけの古い機器が揃っていることは珍しいのではないかと思われる。北側壁面一帯には,近隣の臼島で生産されたという瓦群が並んでいる。「西光寺大鬼瓦」など大型のものが特に展示の目玉ともいえるサイズを誇っている。大崎上島では,江戸時代から三十三観音霊場が整備されていた。西光寺はそのうち第16番札所となっている。大崎上島での瓦生産の拠点,臼島で現在では無人島となっている。明治29年から瓦が生産されていたが,明治年間には生産中止となった。臼島には瓦生産に必要な水と良質な粘土がとれたからであるという。資料館中央手前よりには,明治時代を中心とする教科書群が,ガラスケースの中に大量に残されている(写真2)。大崎上島の教育を探るうえで貴重な資料となるであろう。その近くに一連の軍装品が保管されている。陸軍関係では,旧日本陸軍上等兵軍帽と階級章ならびに襟章,軍用水筒・地図嚢など,一番奥に旧陸軍兵士用雑嚢,陸軍将校服・各種軍靴・ゲートルなどが見受けられる。旧海軍のものでは,軍帽(日露戦争期)などがある。これには乗務する軍艦の名前が書かれており,軍艦秋津島洲(あきつしま)とある。おそらく日清戦争時の防護巡洋艦で日露戦争にも参戦した3,172トンの艦であろう。旧ドイツ陸軍特有の形式の鉄兜であるが,日中戦争で中国から戦利品として持ち帰ったものであろうと推測される。産業面では,銀行金庫・農機具・醤油製造道具・山仕事の道具・製塩業の各種用具など,島に立脚したものがみられる。南東側壁面一角には民具が充実しており,民家の一室を再現したような空間に多様な用具類が展示されている(写真3)(2)。他にも地元郷土史研究会による解説や様々な資料類などがあり特に目をひかれた。これらをデジカメで写真にとり,適時必要な参考文献を調達して少しずつ内容の解明に努めていく作業を行った(3)

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写真2 教科書類
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写真3 民具

3 .成果

大崎郷土資料館のすべての収蔵品を詳細に記録かつ分析することはできないまでも,これまで全く手つかずの作業を一通り実行することができた。その上で,種々の参考文献を入手して照らし合わせ,収蔵物の内容をできるだけ分析してみた。そうして得られた成果の一部を本校のサーバ上にアップすることができた。また,得られた成果の内容を,他の博物館や類似施設などとの現状で比較考察し(4),大崎郷土資料館の将来的課題に関して,本年度発行予定の本校研究紀要に「大崎郷土資料館の特色と課題に関する一考察」として公表することができた。あわせて調査の過程で本校同僚教員や,町役場関係者との協力体制もある程度整えていくことができたので,成果としてはかなり大きな前進であったと言えるだろう。

4.まとめ

大崎郷土資料館には,確かに様々な課題と将来性が内包されている。島内の他の資料館に比較して,知名度が相対的に落ちる。今後はHPや展示などを活用して,可能な限り多くの人々に知ってもらう必要がある。無論,収蔵品の調査は事後も継続されていくべきで,このことも課題として残っている。それとは別に,専門知識や技術を持つ学芸員などの人材の確保が新たな課題として浮上してきた。それには大崎上島学を軸として,生涯学習教育を充実させ,長いタイムスパンをかけて人材育成に臨む計画がいるだろう。

参考文献
1) 広島商船高等専門学校創立八十周年記念事業協賛会『広島商船高等専門学校 八十年史』(広島商船高等専門学校, 1980年),広島商船高等専門学校 創立百周年記念事業百年史編集部会編『広島商船高等専門学校 百年史』(広島商船高等専門学校, 2000年)。
2) 馬場宏『近世の東野村』東野町シリーズ1 (東野町,1989年), 12頁。
3) 『宮本常一著作集4 日本の離島』第1集 (未来社, 1965年) 。三浦秀宥『荒神とミサキ—岡山県の民間信仰—』(名著出版, 1989年)。白幡洋三郎編著・合田健監修『新・瀬戸内海文化シリーズ2 瀬戸内海の文化と環境』(神戸新聞総合出版センター, 1999年)。 徳丸亜木「ソナンとフナダマ」『歴史人類』43 (2015年) など。
4) 本間浩一「公立博物館のウェブサイトの現状と課題—一般市民からの視点による分析と,価値向上のための施策の提案—」『博物館学雑誌』35-1 (2009年) 。佐々木正峰「博物館のこれから 地域と文化の創造」『博物館学研究』45-3 (2010年)。大沼織江・山本住次「地域課題解決において博物館が果たす役割—東大和市立狭山緑地の保全を例として—」『博物館学雑誌』40-1 (2014年)。

(公開:平成28年5月)

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