国立広島商船高等専門学校
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地と技の継承

船舶に起因する地(知)と技の継承事業

清田 耕司,大内 一弘,山田 健治(広島丸),
岡村 修司(流通情報工学科),脇山 功(瀬戸内海写真家),
岡崎 環(広島民族学会事務局長),中道 豪一(非常勤講師),
田葉 行宏(かみじまの風,校友会副会長),半田 康博(校友副会長),
榎本 江司(国土交通省OB,大崎上島地域協議会),
木原 賢二(大崎上島町地域協議会),松島 勇雄(電子制御工学科)

概要 完全離島である大崎上島は,古の時代から瀬戸内海における海上交通の拠点であり,近年は,北海道から阪神間を結んでいた北前船や北九州方面と阪神間において石炭などを輸送していた機帆船などの潮待ち風待ちの港として栄え,造船業の発展,船員の供給,みかん等の柑橘類栽培が盛んに行われてきた地域であった。しかし,島内に約30社を数えた造船所のほとんどが閉鎖され痕跡を残すだけとなり,その関係者も高年齢化している。そこで「大崎上島の船舶に起因する地(知)と技の継承に向けて」として,大崎上島に縁のある船や造船業を中心に,写真,文献資料,無形,有形文化財等の調査収集や地元の住民や造船関係者からの聞き取り調査を行い,収集資料のデジタルアーカイブス化及びデータベース化を行い,データの利活用を行うことで大崎上島の活性化の一助となることを目指している。

キーワード 教育/地域貢献/郷土史/造船/北前船

 1.はじめに

収集したデータを活用して島の内外へ情報発信するために「現代 大崎上島造船歴史MAP(仮称)」,郷土学習教材「私たちの大崎上島(仮称)」,バーチャル地(知)と技の歴史博物館などを作成することで,離島の活性化の一助となることを目指している。また,卒業研究などでも取り組むことにより,海事関係の技術者を目指す学生の資質向上にも役立てたい。平成26年度成果報告書では,「船の写真から見る大崎上島の歴史」と題して,本取り組みの序章を報告した。

1.1 歴史文化研究会の立ち上げ

大崎上島町における「地(知)と技の継承」を目指し,大崎上島の発展と郷土の歴史,文化の調査並びに地域,行政,学校(教職員,学生)及び有識者相互の親睦と協力を図ることを目的として事業展開するため,「広島商船高等専門学校COC大崎上島歴史文化研究会(以下,歴史文化研とする)」を設立した。今後も,学内外から参加者を増やし,活性化していきたい。

2.研究内容

2-1 資料収集

歴史文化研を中心に,本校卒業生,旧教職員,地域住民や特に大崎上島地域協議会から,多数の資料提供を受けることができ,現在では約10,000点以上の写真,ネガ及びアルバム,明治期の航海日誌,本校卒業生のご遺族から船員手帳,海技免状,六分儀,双眼鏡,卒業時の金時計などの資料を入手した。また,本校校友会においても多数本校の歴史資料を校内で保管している。今後も引き続き,地域住民,行政等の方々の協力を得ながら,機会をみて資料提供についてのお願いをしたい。

2-2 デジタルアーカイブス化,保管,補修

収集資料は,COC事業で整備した長期保存可能なデータ形式で撮影できるデジタルカメラを中心とした複写システム(図1,図2)及び大型スキャナーを活用してデジタルアーカイブス化を図っている。デジタルデータを活用して,校内及び校外における閲覧や展示を行うことを予定している。
デジタル化や資料の整備作業では,外部有識者から技術的なサポートを得て作業を進めることが出来ている。また,資料によっては経年劣化に配慮して,整備や手入れを行わなければならないものも多数あるので,資料に応じた管理を行っていきたい。

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図1 複写システム      図2 複写作業

2-3 船の調査

大崎上島で建造されるなど,大崎上島に縁のある船舶を調査するため海事図書館,国会図書館でも調査を行っている。海事図書館では,船舶関係の書籍資料が充実しているので,大崎上島地域協議会から提供していただいた写真資料を解析して判読した船名をもとに,日本船名録などから,船の要目,造船所,所有者を調査している。日本船名録などの船舶の調査を行える基本資料について,明治期のものは,本校に所有していないため,海事図書館や国会図書館において数回調査を行っている。また,明治期の船名録は,データベース化されたCDディスクを購入することができた。大正期以降については,国会図書館,海事図書館のデータについて,引き続き調査を行う。

2-4 学内調査

学内における資料調査として,本校図書館所蔵書籍,広島商船高等学校の時期に在籍された高橋元校長(昭和21年から昭和35年在籍)のご遺族から提供のあった写真をはじめとする本校の歴史資料(校旗,カッター用の艇尾旗等),校友会管理の60周年誌等の記念誌作成用の資料などを調査している。今年度は,資料を長期保管にむけ,手入れのため屋外で風通しを行った。

2-5 学外調査

学外調査として,海事図書館及び国会図書館などにおける書籍を中心とした調査や大崎上島の廻船問屋が多数所有し,北前船(弁財船)の寄港地に設けられている博物館,海事資料館などを訪問して,大崎上島とのつながりや当時の様子や海事全般を調査している。これまで,函館(金森倉庫,北洋資料館,青函連絡船記念館摩周丸),青森(北前船復元船「みちのく丸」(図3)),富山(北前船廻船問屋森家(図4,5)),射水(海王丸),高岡(伏木北前船資料館:旧秋元家),金沢(石川県銭屋五兵衛記念館),加賀(北前船の里資料館)などを訪問した。
文献調査だけでは,知り得ない資料の入手や関係者への聞き取り調査で得る情報は多い。北前船の里資料館では,北前船研究会の会報を入手できた。今後も,北前船や海事に関する博物館等を訪問調査し,見識を高めたい。

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図3 みちのく丸                       図4 森家内部       図5 所有船の模型

2-6 卒業研究

昨年度の卒業研究は,本事業の調査,収集の序章とホームページの作成を行った。今年度は,担当学生が別テーマを希望したので,平成28年度以降は担当学生と共に,本事業を行う予定である。

3 .成果

情報発信として,ホームページの作成,データベースの構築,大崎上島と本校の歴史年表(第一版)を作成した。引き続き資料収集を行うとともに,近隣の小中学生向けの郷土学習用教材作成を計画している。

3-1 歴史年表

収集したデータをもとに,大崎上島町と本校の歴史年表(図6)を作成した。作成した年表は,昨年度の成果報告会(大崎上島町),本校校友会総会(東京),平成27年度アイランダー2015(東京)で展示,説明を行い,資料提供のお願いをした。今後は,追加修正を行い大崎上島町内の「ふれあい郷土資料館」,「海と島の歴史資料館」などでの展示計画を調整中である。

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図6 大崎上島町と歴史年表(第1版)

3-2 口頭発表

研究の中間報告を兼ねて,平成27年1月10日第20回高専シンポジウムin函館に参加し,口頭発表を行った。

4.まとめ

COC事業のおかげで,歴史文化研における「地(知)と技の継承事業」を進めることができている。現時点において,膨大な資料を収集しているが,今後も効率よく整理・保管を行い,事業を進めていきたい。

(公開:平成28年5月)

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