国立広島商船高等専門学校
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住民参加と原子力教育

学生・住民・専門家による原子力討論会と教育効果

大山 博史(一般教科)・大和田 寛(電子制御工学科)・高山 敦好(商船学科)

概要 平成24年12月8日(土),広島商船高等専門学校において「原子力討論会 in 広島2012~2030年代原子力発電廃絶が可能か~」を地域交流事業の一環として開催した。参加者は,原子力の専門家である日本原子力学会シニアネットワーク連絡会 (SNW) のメンバー6名,学生26名,地域の方12名及び教員6名であった。本研究では討論会全体の評価として,長崎大学教育学研究科の糸山景大名誉教授が開発した,教科教育研究手法の一つである“連想法を用いた授業評価”を原子力討論会に対して適用し,主として情意ベクトルによる情意面の評価を用いた。この方法は,授業を数値的に評価するために開発されたものであるが,この方法を討論会全体に提供することにより,討論会から参加者がどの内容に興味を示したか,どの内容が分かりやすかったか,あるいはどのような点が不満であったかなどを数値的に評価した。

キーワード 地域教育/学生・住民・専門家/原子力教育/教育評価

1.はじめに

原子力発電を取り巻く厳しい状況の中,地域連携の一環として原子力討論会を実施した。本討論会には学生,原子力の専門家,大崎上島の方および島の対岸にある竹原の方に参加していただいた。討論会の成果を数値的に評価するために,長崎大学教育学研究科の糸山景名誉教授が開発した,教科教育研究手法の一つである“連想法を用いた授業評価”を原子力討論会に対して適用した。本研究では,主として情意ベクトルによる情意面の評価を用いた。なお、これまでに、本校及び日本原子力学会シニアネットワーク連絡会との共催で原子力討論会 in 広島を5回開催している[1-5]。この報告は4回目の討論会について記載したものである。

2.討論会内容

平成24年12月8日(土),広島商船高等専門学校において「原子力討論会 in 広島2012~2030年代原子力発電廃絶が可能か~」を地域交流事業の一環として開催した。この討論会は原子力の専門家である日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)のメンバー6名に参加していただき進められた。SNWは,主として原子力発電関連企業の退職者から構成されており,原子力発電の原理,設備,廃棄物,安全性,利用法等のエキスパートである。次世代を担う原子力系学生,工学部系学生,教育学部系学生等,様々な学生と対話する機会を持ち,学生に知識や経験を伝える活動をしている。
討論会の始めに西菱エンジニアリング(株)専門部長松永健一氏による講演会“エネルギー選択の多様な視点”を実施し,その後テーマ別に3つのグループに分かれて討論会を実施した。それぞれテーマは,(1)「2030年代に原子力発電廃絶が可能か」,(2)「放射線の人体への影響」,(3)「事故後の福島の状況について」であった。
討論会は,本校学生及び地域の方が質問を出しSNWのメンバーが答える形で進められた。また,その討論の結果を学生がまとめ,参加者全員に対して10分程度の発表会を行った。

3.成果

原子力討論会の教育的効果を評価するために,長崎大学の糸山景大名誉教授の提案した,連想法による授業評価手法を,討論会に適用した。連想法は,授業を数値的に評価するために学級を集団として取扱う方法である。この連想法にはいくつかの手法があるが,今回は“情意ベクトルによる方法”を討論会の評価に用いた。この方法は,討論会後のアンケートをとり,「難しかったこと」,「やさしかったこと」「面白かったこと」,「面白くなかったこと」の4項目について,複数回答してもらう。このアンケートにおいて「難しい―やさしい」及び「面白い―面白くない」が対になっておりそれぞれx軸,y軸として扱い,ベクトル図を作成するものである。

表1 情意連想表(討論会全体)

アンケート結果を第一の方法として講演会,専門家との対話,発表,学習環境の4つに関する答えがあったものを選び出した(表1)。学習環境は,声の大きさ,エアコンの温度,文字の見やすさなどに関するものである。表1において,(難しい)から(やさしい)を引いたもの及び(面白い)から(面白くない)を引いたものの回答者数に対する割合を情意ベクトルと呼び,グラフ化したものが,図1である。


図1 討論会についての情意ベクトル

図1からわかることとして,討論会に関しては回答数も多く関心が高く,内容の程度としてはちょうどよかったと考えられる。また,講演会については回答数が少なく,あまり印象として強く残っていなかったようである。またベクトルから見ると少し難しく,多少の我慢を強いていたように見えるが,回答数が少なく正確な結果とは言えない。学生の発表に関しては,わかりやすく面白いとの結果であった。情意ベクトルによる評価は,全体をまとめて評価するものであり,あくまで個々の意志が出てくるものではない。また今回分類した項目に関する回答数が少なくなってしまった原因は,できるだけ回答を誘導せず簡単な質問で考えを導き出すためであるが,分かりやすい結果を得るためにはアンケートのとり方に工夫が必要であるかもしれない。
第二の方法としてアンケートから,内容に関する項目を選び出したものが表2である。選び出した項目は,原子力,福島事故,エネルギー,放射線,宇宙や物質,完全性に関する記述のあった項目である。

表2 情意連想表(討論内容)

この表をもとに同様の情意ベクトルを描いたものが図2である。


図2 討論内容についての情意ベクトル

図2から,福島の事故や,事故後の状況に関する内容が最も興味を引き,かつ分かりやすい内容であったと考えられる。今回の討論会のテーマから考えると当然の結果とも考えられるが,期待した結果でもある。また,原子力発電の仕組みや原理等に関する内容は,面白くかつ難しいとベクトルは示しているが,原子力教育という意味ではある程度難しいと参加者が感じる方が好ましい状況であり,これも期待どおりといえる。主に講演会の中にあった,宇宙や物質に関する内容は,多くの参加者の記憶には残っているが,難しさだけが強く残ったようである。

4.まとめ

討論会の評価方法として,情意ベクトルによる方法を用いた。アンケートのとり方やカテゴリーの分け方にまだ問題点は残るが,数値的に評価しにくい討論会を評価する一つの方法としてうまく適用できたと考えている。連想法による授業評価方法は他の手法もあり,今後それらも取り入れたいと思っている。

参考文献

1) 広島商船高等専門学校:原子力討論会 in 広島2009 報告書
2) 日本原子力学会SNW:原子力討論会 in 広島2010 報告書
3) 日本原子力学会SNW:原子力討論会 in 広島2011 報告書
4) 日本原子力学会SNW:原子力討論会 in 広島2012 報告書
5) 日本原子力学会SNW:原子力討論会 in 広島2013 報告書

(原稿受理:2014年2月 公開日:2014年4月1日)

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