国立広島商船高等専門学校
文部科学省 地(知)の拠点

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離島高専の教育・研究

離島高専の教育・研究

永岩 健一郎,長谷川 尚道,馬場 弘明,水井 真治,舟木 弥夫,
桑田 明広,松島 勇雄(広島商船高等専門学校)
川本 亮之,閑田 悠子,三村 竜也,上田 和彦,御堂  渓,川上 千枝
(大崎上島町役場)

1.はじめに

瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の大崎上島(図1)に大崎上島町があり,平成15年に旧3町(大崎町,東野町,木江町)が合併した広島県で架橋されていない完全離島である。大崎上島町は広島県の中で最も広い面積を持ち,人口の多い完全離島にあり,豊田郡を名乗る唯一の町である。平成21年度の資料によると財政力指数は0.32で全国市町村平均0.46,広島県市町村平均0.51より若干低い。主要産業は第一次産業(柑橘栽培など,栽培漁業),第二次産業(造船業,鉛精錬業)である。
広島商船高等専門学校(以下,「本校」という)は,中学校卒業後に商船及び工業系の技術者を育成する学校であり,商船学科・工業系学科(流通情報工学科,電子制御工学科)3学科(1学年定員120名)と専攻科(海事システム工学専攻,産業システム工学専攻)で総定員数664名である。広島県の南部,瀬戸内海のほぼ中央に位置する大崎上島にあり,本校の歴史は116年の伝統がある。
本校は平成25年度文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」において“離島の知の拠点形成-離島高専の教育研究と離島の振興・活性化-”が採択され,高専教育のモデル事業とするべく教育改革・研究推進・社会貢献事業を融合した事業プログラムを行っている。COC事業の概要と本校の取り組むべき研究推進の方向性について述べる。

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2.COC事業

現在の離島社会の諸課題は,20年後の日本社会の課題であるといわれている。少子高齢化,社会構造の変化,財政の縮小または成熟化などの社会問題と深い関係がある。このような社会に対する課題解決は,地域から強く要請されており,地域に根ざした高等教育機関の責務として重要である。
そこで,COC事業は連携自治体の広島県大崎上島町と連携して,①離島資源を活用した教育を行い,故郷や地域への関心・理解を深めるとともに,将来,地域に貢献できる人材を育成する。②本島を含む国内の離島課題(ニーズ)と本校の研究(シーズ)をマッチングさせて,新たな研究活動を創出し,離島社会の生活の向上と産業の振興を図る。③学生・教員が行う児童生徒・住民・高齢者などを対象とする教育サービスに加えて,地域産業界の人材育成を支援する。④教育研究活動の成果を情報発信・共有し,全国離島の課題解決に貢献する。そのため,COC事業では教育改革・研究推進・社会貢献事業の展開により,地域に根ざした取り組みを行う学校改革事業である。

2.1 教育改革事業

教育改革では①地域資源を授業に取り込み,地域の現状を理解し課題解決に向けた基盤を作るために地域志向科目を充実させて,地域・海域・離島等に関わる教材使用・話題提供・自学自習レポートの提出など,地域社会への関心と理解を深める。②実験実習・演習・卒業研究・特別研究において,知識・技術を活用して,問題点とその原因の発見能力を身につけ,解決策を考え,それを計画して実現する能力を養うため,課題の分析手法を演習し,課題発見と課題解決の手法を学修する。
COC事業では,教育改革で地域志向科目(表1)を導入する。最終的には数値目標として82科目(52.2%)を導入する計画である。
その結果として,卒(修)業後どの地域で生活しても,若き時代を過ごした大崎上島や生まれ育った故郷を思い,その地域を支援する心を培い,今日の困難な社会問題を解決できる人材を育成することに資する。

表1 地域志向科目の数値導入目標

H24実績 H25達成状況 H26達成目標 H29達成目標
地域に関する学修を明示している授業科目数(本科) 33  科目 49   科目 57  科目 82  科目
地域に関する学修を明示している授業科目履修学生数(本科) 1,080 人 1,835  人 2,165 人 2,750 人

2.2 研究推進事業

研究推進は離島の課題を①人口・動態,②政策・財政,③交通,④情報通信,⑤産業,⑥生活・環境,⑦医療・福祉,⑧教育・文化,⑨観光・交流,⑩エネルギー,⑪防災・安全,⑫情報発信の12分野に分類して,各分野が相互に連携しながら研究活動(表2)を実施する。地域研究では自治体をはじめ,地域住民や関係団体の協力を得て,現地の状況を把握するためアンケート調査やヒアリングを実施する。
それらの結果として,本校の研究(シーズ)とマッチングし,この研究成果を情報発信して,離島社会の振興・活性化に寄与する。最終的には本校教員の91%が地域課題研究を実施する予定である。

表2 地域との共同研究数と地域研究教員(割合)

H24実績 H25達成状況 H26達成目標 H29達成目標
地域との共同研究数 39件 39件 67件 112件
地域社会研究を実施する教員数 15名 15名 23名 50名
地域社会研究を実施する教員割合 29% 29% 42% 91%

2.3 社会貢献事業

社会貢献は児童・生徒を対象とする教育支援,住民を対象とする生涯学習,企業を対象とする技術指導や人材育成が主なものとなる。高齢化が進む本島では,15〜22歳までの年齢層は本校の学生が大部分を占める。そこで,島内地区の運動会,駅伝マラソン大会または櫂伝馬などの行事・催し物に参加して,高齢化が進行する離島において重要な地域活性化につなげる。事業最終年度には,学生の90%が社会貢献活動を実施する目標である。

 

H24実績 H25達成状況 H26達成目標 H29達成目標
地域貢献活動に参加する教員数 36名 38名 43名 50名
地域貢献活動に参加する教員割合 71% 75% 78% 91%
地域貢献活動に参加する学生数(本科) 237名  324名 360名 432名
地域貢献活動に参加する学生割合(本科) 49%  58% 67% 90%

3.研究推進事業

今後の厳しい社会の到来に備え,地域のリーダーとして活躍できる人材を育成する必要がある。そのため,学生には地域資源を活用した教育・研究・社会貢献の3本柱の事業を展開して,課題解決に必要な知識・技術の適用課程を学修する。
高専は教育と研究を両輪の輪として展開するよう定められている(高等専門学校設置基準第2条第2項[i]。また,高等専門学校は中学校を卒業した学生を教育しているため,高校学校課程を有する。高専では卒業要件を満たす単位数(1年30時間が1単位)は167単位以上(内,一般科目は75単位以上,専門科目は82単位以上)であり,年間平均時間数は33.4時間の授業時間である。
ここでは,事業の一部である研究推進に焦点を当てて,これまで行ってきた取り組みと今後の展開について次に説明する。

3.1 地域課題のあぶりだしと課題の絞込み

本校では,従来から地域課題研究を進めてきた。教員の約30%弱の教員が地域の課題解決に取り組んでいる。COC事業では,地域住民との連携により課題解決に取り組む。地域課題研究に取り組む第一歩として,自治体職員と連携した。平成25年(COC事業初年度)より,地域自治体である大崎上島町から共同研究者6名を招聘して,本校教員(52名)と一緒に12領域に分類された課題について議論した。まずは,ワークショップ(以下,「WS」という。)として,ブレインストーミングにより課題をあぶりだし,具体的な課題を絞り込み,その中からマッチングにより,課題解決をする対象を絞り込んだ。地域課題は,課題ごとに定期的に,研究の進捗・進め方の状況を共有しながら,WSを継続している。

4.おわりに

本校のCOC事業は教育・研究・社会貢献という3本柱を相互連携して人間力育成教育プログラムを実施している。「離島社会の振興・活性化」に向けて,地域課題解決に向けた研究を地域(自治体職員)と連携してWS形式により実施している。今後,地域課題の成果となるべく研究を継続していく。
COC事業を通して,離島社会の研究成果の拠点づくりを目標としている。離島社会の課題は深刻であり,それぞれの課題が複雑にならび見合っていると考える。一組織で有効な方策を捻出することは難しい。そのため,全国の離島社会に潜在する課題解決の研究成果を結集し,研究成果の集合体を構築することが,離島社会に実りのあるものとすることができるであろう。よって,研究成果を積極的に情報収集・公開を行い,離島社会の課題解決の場が必要である。本校は,COC事業の中で「離島課題解決に向けた知の集合体」を目指している。


i高等専門学校設置基準 第2条第2項 (途中略)高等専門学校は,その教育内容を学術の進展に即応させるため,必要な研究が行われるように努めるものとする。

(公開:平成28年5月)

 

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