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社会貢献力の教育

創造力・実践力と社会貢献力の教育に関する分野 -東野住吉祭櫂伝馬競漕への支援について-

柴山 慧(一般教科),木下 恵介(商船学科)御堂 渓(大崎上島町役場),濱田 榮(総務課)
竹内 康二,大浦 勝也,高橋 良幸(技術支援センター)高橋 泉(学生課),
越智 祐光(姫路獨協大学)

概要 大崎上島町の東野で250年以上にわたって開催されている住吉祭と櫂伝馬競漕という地域の伝統行事がある。この櫂伝馬競漕は250年以上続く伝統行事だが,近年の過疎化,少子高齢化のあおりをまともに受ける形で,参加人数の減少,規模の縮小が問題となっていた。そこで,本校の物的・人的支援を活用した支援事業を展開した。具体的には,準備段階で運営委員会の会議に本校教員が出席,祭のポスターやチラシをイラスト同好会の学生が作成した。そして,祭当日では櫂伝馬競漕へ学生・職員チームの参加,映像記録を学生が作成,練習船「ひかり」とライフジャケットの貸し出し,当日の救護対応スタッフへの参加などを多岐にわたる活動となった。今回の活動の結果,参加した職員と学生は地域の伝統行事への理解が深まり,地域住民との積極的な交流を図ることができた。祭自体も例年以上に盛り上がり,本校がそれに貢献できたことは十分にうかがい知ることができた。

キーワード 教育/地域貢献/櫂伝馬競漕/ボランティア/国際交流

1.はじめに

大崎上島の旧東野町地区では毎年8月13日に住吉祭がとりおこなわれ,そこで地区対抗の櫂伝馬競漕が開催される。櫂伝馬とは櫂を用いて操作する伝馬船のことで,かつては水軍の襲艇として使用された船のことを櫂伝馬と呼んでいた。この競漕は250年以上続く伝統行事だが,近年の過疎化、少子高齢化のあおりをまともに受ける形で,参加人数の減少,規模の縮小が問題となっていた。

2.内容

まず準備段階である櫂伝馬競漕運営委員会の会議に柴山,木下の両名が参加し,他の地域での櫂伝馬競漕の情報提供と現場のニーズと本校が実施可能な活動について調整作業を行い,支援の大まかな方向性を決定した。その結果,今年度は1日のうち何本かのレースへ本校学生・職員チームの参加,ポスター・チラシ作成を本校イラスト同好会の学生が担当,当日の映像記録を本校学生が担当することとなった。また,竹内技術支援センター長と高橋看護師はもともと地域住民として参加しており,練習船「ひかり」の操船とライフジャケットの貸し出し,当日の救護対応などを行った。

表1 支援活動と参加者の一覧表
(※  M:商船学科,C:電子制御工学科,D:流通情報工学科)

実施した活動 参加者 参加人数
運営会議への出席 柴山,木下,御堂 3名
ポスター・チラシの作成 D3宅野,D3里信 2名
櫂伝馬競走への参加 D5ラオリー,M4フィルダウス,M4原,M4笹栗,M3藤原,C3堀井,
D2谷本,C1藤原,D1坂本,柴山,木下,濱田,大浦,高橋(良),
越智
15名
映像記録の撮影・編集 D2谷本,D2小川,御堂  3名
練習船操作・機材貸出 竹内,大浦,高橋(良)  3名
救護対応スタッフ 高橋(泉)  1名
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写真1 宅野学生作成のポスター
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写真2 御座船として使用された練習船
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写真3 櫂伝馬に乗船する学生や留学生

3.成果

当日を終えての総括としては,本校学生や教職員がこの櫂伝馬競漕に参加することは非常に意義のあることであった。この一日を通じて,地域住民と交流する機会を多く持つことができ,相互理解が深まったと感じる。しかも,今回は留学生が参加したこともあり,彼らにとっては日本の文化を肌で感じるまたとない機会となり,地域住民にとっては,外国人との交流ができる貴重な場となった。また,本校はかつて櫂伝馬競漕に参加していた矢弓区に所在しているだけに,学校としての地域貢献にも多大な効果があったと思われる。櫂伝馬競漕自体も,女子櫂チーム,広島商船など新チームの参加,鮴崎区チームの復活もあり,例年以上の盛り上がりとなった。
次年度以降の検討課題だが,競漕への参加チームを事前に組織化して,しっかりと練習をしたうえでの参加が望ましいということがあげられる。日程上は本校寮生不在の時期なので,大崎上島出身者と本校教職員有志でのチーム編成を行い,練習を積んでいくという方法,もしくは,本校カッター部の活動の一部と位置付けて,若潮会館で合宿させながら本番に臨ませるという方法も考えられる。また,練習をするにあたり,もう一つ必要となるのが櫂伝馬の存在である。現状では,参加地区に頼めば櫂伝馬と船頭,太鼓は貸してもらって練習することは可能である。しかしながら,矢弓地区には使用していない櫂伝馬が残っており,COC事業が継続している間に,それを購入してしまうのも一つの手段ではないかと考える。櫂伝馬は木造和船として非常に学術的にも価値が高いものであり,その建造技術の継承が日本全国で課題となっている。技術が完全に途絶えてしまう前に,本校が購入した櫂伝馬をもとに,図面のデータ化,建造方法の記録を行っておけば,商船高専としての特色ある研究活動となるのは間違いない。

4.まとめ

大崎上島町東野地区で開催されている東野住吉祭櫂伝馬競漕に,本校の物的・人的資源を活用したさまざまな支援活動を実施した。その結果,本校学生・職員の地域の伝統行事への理解が深まり,地域住民との国籍をも超えた交流,祭自体の盛り上がりに対する貢献など,さまざまな面での成果を垣間見ることができた。櫂伝馬という木造和船についてのあらゆる活動は,商船系高等専門学校である本校の活動としては学術的・研究的な価値も高く,今後も継続して実施していく必要性を感じることができた。

参考文献

1)松木雅文:子ども櫂伝馬競漕における心拍数変動と運動強度の推定,広島商船高等専門学校紀要10,pp.187-194(1988)
2)安富敏雄:瀬戸内の舟競漕,日本体育学会大会号(47),pp.642(1996)
3)石井浩一:瀬戸内の櫂伝馬競漕–身体技法の変化と不変化, 体育の科学(48),pp.891-896,杏林書院(1998)
4)高津勝:和船競漕考-社会史的アプローチ,一橋大学スポーツ研究,22,pp.35‐44(2003)
5)馬場宏:移りゆくとき,聖恵授産所(2007)
6)大崎上島町教育委員会:住吉祭・櫂伝馬と古社八幡神社秋祭り,pp.2-24,大崎上島町教育委員会(2012)
7)柴山慧,御堂渓:大崎上島住吉祭における櫂伝馬競漕関係者の意識について,広島商船高等専門学校紀要37,pp.77-85(2015)

(公開:平成28年4月)

 

 

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