国立広島商船高等専門学校
文部科学省 地(知)の拠点

MENU

理科教育支援

廃材を利用した理科教育支援用教材の開発及びものづくり教室

今井 慎一(電子制御工学科)

概要 2007年以降,団塊の世代の退職により,巧みな熟練技術を有する技術者が年々不足している。そのため,今まで培ってきた技術やノウハウが継承されず問題になっており,ものづくりを支えるための人材育成が早急に求められている。また,近年小中高学生の不器用さや理科離れなど,技術・工業に対する関心の低さが問題となっている。このような状況において,小中学生に対し「ものづくり」体験による理工学分野への興味付けを与える機会を提供することを目的とし,「ものづくり」への興味・関心を抱かせ,その素晴らしさや重要性に気づかせることは,小中学生の将来にとって大きな意義があると考える。そこで,本取組では地域小学校や本島内イベントにおいて、オリジナルに開発した教材を用いた「ものづくり教室」を実施した。また,工作作業をする小中学生に対する安全対策として,スタッフとして教職員・学生を数人体制で配置し,安全面への配慮をした。

キーワード 社会貢献/理科教育支援/ものづくり教室/教材開発

1.はじめに

近年,子どもたちの不器用さや理工系離れが問題となっている。現在の教育課程における授業時間では,初等中等教育の段階ですでに「理科・技術離れ」の授業が行われている現状認識が必要で,「物を知らない子供」を育てているのが現在の教育であると著者は考えている。このような状況下において,小中学生が「ものづくり」を体験し、理科・技術への興味・関心を抱き,その重要性に気づく機会を提供することは、将来の我が国にとって大きな意義がある。
また,「ものづくり」に関する興味づけについては年齢的に早期に行うべきとの視点から,小・中学校の児童・生徒に対する実験的・体験的な「ものづくり学習」の提供は必要不可欠である。このような背景から,高専・大学や科学館などでは,科学・技術教育に対する啓発活動の一環として種々な取組を行っている。本校も、これまでに種々の活動を展開してきた。その一つが本報告で紹介する身近なモノを活用して開発した「ものづくり教材」である。本教材は,身の回りの廃材を活用し作成するロボット教材である。この教材を用いて、地域の小学校・中学生の児童・生徒を対象する教室を開催した。

2.教材の開発

2.1 開発目標

ものづくり教育は,ただ単にモノを製作するだけではなく,創造力,探究心,問題解決力,自己有用感などを身につけることが重要である。ものづくり教育を実施するための教材は数多く開発・販売されているが,その多くはキットを組み立てる物が多く,さらに複雑な機構や装置で構成されており,児童・生徒が創造力やアイデアを発揮することは困難である。今回開発するものづくり教材は、モータと電池ケース,網戸のテープ以外は,普段捨ててしまうダンボールやペットボトルなど身の回りの廃材を部品として利用する。

2.2 「ブルブル」ロボ

写真1に振動で動く「ブルブル」ロボを示す。このロボットは,携帯電話などに搭載されている振動機能を用い,振動推進により動くロボットである。このロボットは,網戸のテープの取り付け方により,動く早さや,回転方向が決まるため,「タイヤ等が無く,網戸の毛でどうやって動くのか」を児童・生徒が考えて自分なりの意見を述べる機会を提供したり,児童・生徒の製作した「ロボットがまっすぐ進まない,動かない」などの現象が起きた場合,「なぜ」動かないのかを考えさせ,自分なりの解決方法を見つける機会を提供することに、適した教材である。それでも動かない場合は,答えを教えるのではなく,ヒントを与えて児童自身が発見するように工夫を行なった。また、図1に示すようなA4サイズの用紙1枚にイラストを含む説明書を作成し,ロボットの制作手順を児童・生徒が視覚的に理解できるよう工夫した。この説明書により,講師側がくわしい説明をしなくても,児童・生徒自身が説明書を見ながら試行錯誤し,製作できるようになった。

理科教育支援

写真1 ブルブルロボの試作品

理科教育支援

図1 学生が作成したロボット制作手順

3.成果

3.1 授業実践

大崎上島町等で小中学生対象にブルブルロボを用いた実践講座を行った。講座の様子を写真2に示す。また,写真3に小学生が製作したロボットを示す。講座では,製作に入る前に簡単な仕組みを説明し,後は自由に製作を行う。製作後に,早く進ませるためには,どうすればよいか?まっすぐ進むにはどうすればよいか?などを考える機会を与えた。

理科教育支援

写真2 ロボット講座の風景

理科教育支援

写真3 小学生が作成したロボットの一例

3.2 実践結果と考察

ブルブルロボの講座に参加した小中学生ともにすべての児童・生徒は何度も試行錯誤しながら組み立て,改造を行うことが伺えた。また,同じ内容を小学生と中学生に実施することによって学年による考え方の違いを確認することができた。なお,材料費用についてもブルブルロボは1セット250円と非常に安価にすることができた。講座終了後ブルブルロボに対して実施した小学生の感想文の一部を以下に記載する。感想文から,身近なモノを使うという点においても,児童・生徒の興味を引く適切な教材であったと考えられる。また,「ものづくり」に対して非常に興味をもってくれたことが確認された。
① ゴミでできるのがびっくりした!!!!
② ブラシのきりかただけで,うごきが変わってきて,とてもおもしろかった
③ 他にもどのようなロボットが作れるか調べたい
④ しんどうで動くしくみやほかにもいろいろなしくみをくわしく知りたくなりました
⑤ ちっちゃなロボットでもたくさん部品を使って,時間もかかるんだなと思った

4.まとめ

本報告では,小中学生に工作や工学への興味と理解を深めるため,身近にあるモノを使った教材を開発し,授業実践を行った。一般的にこのようなキットの成否は図り難いと考えられるが,公開講座等での児童・生徒が示した創造力・探究心・問題解決力などから,これらの教材の開発が成功であると考えられる。今後は,さらに講座や授業を実施し,問題点を見つけ,検討,改善していく予定である。
最後に,本教材の製作に協力してくれた,ものづくり同好会の学生に感謝する。

PAGETOP
Copyright © 広島商船高等専門学校 All Rights Reserved.